QFD活用による品質保証計画作成事例
2019-03-18
今回は、商用車用ドラムブレーキ製造工場を事例として、「QFDを活用した品質保証計画」の作成を解説します。
イギリスの提携先の新技術をベースにした設計コンセプトが評価され、客先の開発部門が受注を決定したところ、品証部門が、部品納入実績しかない当社にとっての初の組み立て完成品が、製品として機能しない心配があるとの理由で受注反対を主張する中、顧客トップの判断は、「品証担当専務をリーダーとし、各部門の課長もしくは係長10人からなるプロジェクトチームが新製品の品質を監視する」ことを条件に受注するというものでした。
「確実に機能するブレーキ」をトップ事象にしたQFDにより展開した209項目の末端要因と、9種類の保証方法とのマトリックス図の中で、どの末端要因をどの保証方法で保証するのかが分かる図(A3用紙を縦に使って6枚、つなげると2.2m)に表紙をつけたものを提出。
各部門から、欲しい資料の見本としてファイル1冊分を事前にもらっていただけに、各部門の責任者の顔には明らかに不満の表情が読み取れ、緊張していたところ、リーダーの専務から「自分はこのような資料が欲しかった。この資料を精査して、このプロジェクトの品質保証計画のベースにするように」との発言があり、提出資料が品質保証計画として受理されました。
追加して提出した資料を品証部門のプロジェクトメンバー以外に配布したところ、過去のクレーム経験から2項目の展開漏れの指摘を受ける
筆者が開発経験がないための展開漏れを懸念して、展開要領を説明して開発部門にQFDの作成を依頼したところ、430項目を超える末端要因に展開されたので、最終的にこのQFDを社内の品質保証計画のベースとしました。
9つの保証方法に、エンドユーザーを念頭に「客先保証」という項目を入れたことを専務が高く評価したことから、品質保証計画の遂行における一体感が生まれ、項目によっては客先が保証を引き受けてくれました。
QFDと9つの保証方法とのマトリックス図により、品質保証計画の見える化が図られ、結果として、周知を集めることに成功し、結果として、保証項目の漏れ防止とともに、保証計画の遂行が、目的を理解した的確なものとなりました。
QFDは、開発の信頼性向上につながるとともに、設計思想を具体的な形で製造部門に伝達することができる点が評価され、品質保証体系図に組み込まれ、全客先の製品の品質保証計画が対象となりました。
QFDにより展開された末端要因それぞれに、検査仕様書とQC工程表のナンバーを記入する欄を設けることにより、品質保証体制の漏れを防止するとともに、保証計画の目的が明確となるため、計画遂行が的確になりました。
QFDが、開発と製造・品証のコミュニケーションツールとして機能したことにより、双...
方からの具体的提案を交わすなど、一体感を持った品質保証計画の遂行につながり、結果として、高効率で的確な品質保証が可能になりました。
上記のような効果を手にするためには次の2点がポイントです。
展開は、互いに独立した2項目への展開を順次行う。3項目や4項目への展開は、展開漏れが分からず、結果的に信頼性が失われるので要注意です。
トップ事象は複雑なものが多く、1次展開からの逐次2項目展開は出来ないので、先ず、トップ事象を相互に干渉することの無い項目に分ける必要があります。この事例の場合、9項目に分けてから、それぞれの項目をトップ事象にして、逐次2項目展開に入りました。