◆ 機械加工現場の管理者(班長/主任)になったら何をするべきか
今回は、機械加工現場での仕事を題材に、班長や主任になったらどのような役割を担うべきか、私自身の経験も踏まえ、具体的に見ていきたいと思います。
前回のその1に続いて解説します。
6. 最善な5Sの状態を維持する
金型メーカーや機械加工メーカーに限らず、全ての業種で必要となる5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)の管理です。特に我々の業種においては、安全面、品質面、効率性、客観性という順番で着手するのがオススメです。
それでは、着手する順に見ていきましょう。
(1) 安全面
まず自分や部下が作業するにあたり、環境としてケガや事故の発生確率をゼロにするよう整備することが重要です。重たい鋼材を持った状態で段差を登る作業や、いつも作業着がひっかかる出っ張り、立てかけた鋼材が倒れてきそうな通路、重たいツールや治具が頭より高いところに保管してあるなど、危険な箇所はありませんか。
管理職としては、こうした危険な作業現場が発生しないように、定期巡回を行ったり、そもそもそういった危険な方法をとらせないよう、部下に教育を行っていく必要があります。
(2) 品質面
安全面からの5Sが整ったら、次に着手するのは品質面からの5Sです。高精度なものづくりが要求される機械加工においては、例えば、治具や工具が切り屑まみれになっているとか、エンドミルが折り重なるように引き出しに入れられ、ガラガラと当たりキズができるような保管方法だったりだとすると、とても百分台の精度を加工する製造現場とは言えません。
班長や主任となった人は、「この会社では高精度な加工品ができています」と胸を張って言えるだけの説得力のある加工現場を作り上げ、それを日々維持するための管理の仕組みを作っていきましょう。
(3) 効率性
ものづくりのために最低限必要な『安全面・品質面の5S』が整ったら次は、『効率性を考えた5S』を行います。指示書や図面、工具などを取りに行くために、ウロウロと工場の中を歩き回っていませんか?
私はコンサルティングの際、「一度、段取り作業に入ったら、目安として4メートル四方以内の動線で済むくらいに、道具を手元化してください」とアドバイスしております。
(4) 客観性
安全面・品質面・効率性、これらの面から5Sが整ってきたら最後の段階として、外部の人、特にお客さんから見て、「この会社の製品の品質は高いぞ」と思ってもらえるよう、『対外的な見た目を意識した5S活動』を行います。
すなわち、「自分たちはわかっているから必要ない」と思っていても、外部の人から見て「この会社の管理はしっかりされているな」と思ってもらえるよう、棚にラベルを掲示したり、工場内の通路や作業エリアの明示、もちろん床のライン引きや立ち入り禁止・頭上注意などの注意喚起など行います。
また、未着手・仕掛かり中・加工済み、検査待ち・検査中・検査済みなど、品物の状態を明示し、混入・間違いを防ぐ「識別管理」も重要な客観性に配慮した5S活動の一つです。
「ウチの5Sは自信ありますから、ぜひ工場見学に来てください」と言えるくらい、客観性に配慮した5Sが出来れば最善な5Sの状態と言えるでしょう。
7. 部下のトラブルに対応する
最後は、機械加工現場の管理者(班長/主任)で一番多い業務になるであろう『トラブル対応』です。金型製造や機械加工の仕事は、常にトラブルと隣り合わせです。空いているはずの穴が空いていない、来ているはずの材料が来ていない、CAMデータとおりにかけたはずの加工品がなぜか図面と違っているなどなど、毎日のように何らかのトラブルが発生します。
班長や主任になったら、自分だけでなく部下からのこうした問い合わせに対応していかなければいけません。
班長や主任という立場であれば、ほとんどの方が自分も何ら...
つまり、一定以上のスキルがなければ務まらない仕事が機械加工現場の管理者です。そういった意識を持って日々自分の技術を磨いておきたいものです。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
こうして挙げていくと機械加工現場の管理者の仕事は意外と多いなぁと言う印象ではないでしょうか。班長や主任という立場は、まだ管理職としてのスタートラインに立ったに過ぎません。今後昇格し、さらに広い視点での管理を任されたときには、どのようなスキルが必要になるのか、また別の機会でまとめてみたいと思います。まずは、機械加工現場の班長や主任になった方たちのために、何を管理するべきかをまとめてみました。参考になれば幸いです。