◆ 特許解析、マクロマップからミクロマップへ
わたくしが研究開発から離れ、知的財産部(知財部)に異動してきたきっかけは、世界中から集まる発明情報を使って未来のものづくりを予測できないかということでした。
わたくしのように特許情報の解析をしたいと言って、自ら手を挙げて知財部に入ってきた変わり者は初めてだったようで、逆に当時の知財部長は知財部の地位を上げるためにも新しいことにチャレンジするわたくしを応援してくれました。そのお陰で、元在籍していた会社は他社に比べ、かなり早い段階で特許解析マップのソフトを導入するに至りました。
その後、初めて市販ソフトを使ってマップを作成し、得意満面で現場にそれを提示しました。するといきなり、開発責任者やベテラン技術者等からクレームが付き「実態と合わない」と一蹴されました。市販のソフト自体は優れた解析性能を有していたのですが、わたくしの解析の仕方が甘かったせいで、むしろ現場へ不信感を抱かせる結果となりました。
そこで、マップ作製の本質を理解しなくてはと反省し、外部の講習会に参加するなどして、この分野の最先端におられる方々の作り方、考え方を学ぶことにしました。そこで学んだのは、ミクロマップの作り方とその活用方法でした。マップ作製の本質を知らない素人が、市販ソフトのおもちゃを買ってもらっただけで仕事ができると勘違いしていたことに頭を抱えざるを得ませんでした。
その後、マップの本質を理解したという自信が付き、ミクロマップを作成して再び現場の技術責任者にそれを見せに行きました。彼はそのマップを30分間も黙って食い入るように見ており、その間わたくしはどのような判決が下されるのか「ダメだったら、担当を外れるべきかな」と恐々として耐えていました。
すると突然「八角さん。気に入った。こういうのを持ってきてもらいたかった。自分が予想していた通りの部分もあるし、見えていなかった部分も分かった。うちの会社にこんなことができる人がいたんだな。皆に宣伝してやろう」ということになり、正直、首がつながってホッとしました。
さて、大量の特許情報を市販ソフトを使ってのマクロマップ作製は、効率化という観点からは大変優れた方法です。わたくしも知財戦略やIPランドスケープへの適用を考える際には当然に市販ソフトを使っての解析を行います。しかしながら、マクロマップはあくまで統計情報であることを理解しておかなくてはならないと思います。
発明の本質を系統立てて繋げて見える...
その方法によって作られたミクロマップは、出願戦略を立てる上でも重要な知見になりますし、関係者らと共有化を図ることで、新たな研究テーマ創出のヒントにもなると考えています。
ミクロマップを創るのには手間は掛かりますが、自分の携わる分野で一度それを作ったことがある技術者と作ったことのない技術者には、大きな差が生まれると確信しています。
【出典】八角様 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載