‐社内の問題克服による開発活動‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その14)

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 前回の事例その13に続いて解説します。社内における様々な問題を高いレベルで深く追及して解決することが、競争力のある技術を育成し、売れる製品を生み出す事になります。市販されている設備をそのまま使用している企業では、他社との競争で優位に立つ事は難しく、競争力のある企業は、市販設備の周辺に様々な工夫をして、品質、コストで優位に立てる状況を作り出しています。
 
 実際に、多品種少量の生産に適した最適設備を市販品で見つけることは難しく、特に、市場の小さい製品の場合、それを生産する設備を開発しても機械メ-カ-として、開発投資に要した費用を回収出来るだけの台数を販売出来る見込がないので、必要性が判っていてもその機械を開発する事は、余程の理由がない限り行ないません。
 
 そのような機械をメ-カ-に特注すると、機械の設計に必要なデ-タを収集するコストが嵩み、非常に高額な設備になり、かつ、使い勝手の良くない設備になる場合を多いようです。むしろ、機械のことは詳しくないが、生産に関するノウハウは知り尽くしている当事者が、自企業の責任の下に、仕様を決めて身近に存在している中小の機械業者に細部を指示して発注すると、全面的に任して発注した場合よりもかなり低い価額で設備を開発できる場合が多いようです。なおかつ、使い勝手が良い設備が得られます。
 

1.事例:生産設備の開発

 従業員5人の焼き菓子製造業者が生産設備を開発した事例があります。手作業で焼き菓子を生産していましたが、人手に依存した生産の限界を知り、生産機械を探しました。しかし、希望に添う機械が見つからないため、食品機械メ-カ-に開発を含めて発注依頼しました。納入された機械で生産を開始しましたが、今までの品質を確保出来無いため、その機械の使用を諦め、独自に企業内で開発することを決意しました。
 
 投入、排出などの部分は購入した機械メ-カ-の設計で問題はありませんが、焼き上げる工程に相当する部分に問題があり、この部分の構造が品質を左右することから、構造を決める前に、職人が手作業で生産する時の焼き上げ条件を精査・把握し、そのデ-タに基づいて機械の改善を図ることにしました。
 
 納得出来る品質が再現出来るまで、火加減と焼き上げ時間を何度も測定して、その条件を機械の構造と操作条件に反映させる様に務めました。ガス切断機や溶接機等を常備し、終業後の時間を機械の開発作業に当てて設備を完成させました。部品は近くの機械業者に発注し、組立作業は企業内で行いました。その後、目標にしていた機械を10カ月間で完成させることが出来ました。当初、発注した機械の原形は判らなくなるくらいに変貌し、同じ仕様の2号機は、外部に丸ごと発注しましたが、その価格は当初に発注した機械の半額以下でした。
 
 この様にして開発した機械により供給力・品質・コストで他社が販売している類似の焼き菓子よりも優位な商品が出来るようになり、市場から高い評価を得て、成長の原動力になりました。
 

2.事例:開発した生産設備の商品化

 電子部品を受注生産しているK社では、PPM(百万分の一)単位の不良率を目指して生産技術の向上に取り組んでいました。その中で大手素材メ-カ-から購入している金属素材の表面処理加工が原因ではないか、と思われる不良が集中的に発生することがしばしばありました。
 
 疑いを持っても、素材が原因であると証明出来るデ-タが無く、購入先にクレ-ムを付けることが出来ません。電子部品の検査方法は目視と、一つずつ検査機に掛ける性能検査で成り立っています。検査工程は最も手数を要するネック工程になっていて、工程の流れの障害になっているだけでなく、検査ミスによる出荷後のクレ-ム発生の原因工程にもなっていました。
 
 市販品の中に適当な検査設備が無く、かつ、社内にマイクロエレクトロニクスの技術者が不足していることもあり、検査工程の自動化が先送りされていました。いつまでもこのままではいけないと経営者が判断し、異業種交流で親しくなった社外の技術者に協力を求め、自動検査機の開発に取り組むことにしました。所定の検査を行うだけでなく、検査結果を自動記録する事が出来ることを目的にして開発が行われました。記録することが出来れば、後の分類集計が簡単に出来、不良品発生の再発防止に力を注ぐ時間的な余裕が得られることを目的に、検査機の開発が行われました。
 
 試作品のテスト...
 前回の事例その13に続いて解説します。社内における様々な問題を高いレベルで深く追及して解決することが、競争力のある技術を育成し、売れる製品を生み出す事になります。市販されている設備をそのまま使用している企業では、他社との競争で優位に立つ事は難しく、競争力のある企業は、市販設備の周辺に様々な工夫をして、品質、コストで優位に立てる状況を作り出しています。
 
 実際に、多品種少量の生産に適した最適設備を市販品で見つけることは難しく、特に、市場の小さい製品の場合、それを生産する設備を開発しても機械メ-カ-として、開発投資に要した費用を回収出来るだけの台数を販売出来る見込がないので、必要性が判っていてもその機械を開発する事は、余程の理由がない限り行ないません。
 
 そのような機械をメ-カ-に特注すると、機械の設計に必要なデ-タを収集するコストが嵩み、非常に高額な設備になり、かつ、使い勝手の良くない設備になる場合を多いようです。むしろ、機械のことは詳しくないが、生産に関するノウハウは知り尽くしている当事者が、自企業の責任の下に、仕様を決めて身近に存在している中小の機械業者に細部を指示して発注すると、全面的に任して発注した場合よりもかなり低い価額で設備を開発できる場合が多いようです。なおかつ、使い勝手が良い設備が得られます。
 

1.事例:生産設備の開発

 従業員5人の焼き菓子製造業者が生産設備を開発した事例があります。手作業で焼き菓子を生産していましたが、人手に依存した生産の限界を知り、生産機械を探しました。しかし、希望に添う機械が見つからないため、食品機械メ-カ-に開発を含めて発注依頼しました。納入された機械で生産を開始しましたが、今までの品質を確保出来無いため、その機械の使用を諦め、独自に企業内で開発することを決意しました。
 
 投入、排出などの部分は購入した機械メ-カ-の設計で問題はありませんが、焼き上げる工程に相当する部分に問題があり、この部分の構造が品質を左右することから、構造を決める前に、職人が手作業で生産する時の焼き上げ条件を精査・把握し、そのデ-タに基づいて機械の改善を図ることにしました。
 
 納得出来る品質が再現出来るまで、火加減と焼き上げ時間を何度も測定して、その条件を機械の構造と操作条件に反映させる様に務めました。ガス切断機や溶接機等を常備し、終業後の時間を機械の開発作業に当てて設備を完成させました。部品は近くの機械業者に発注し、組立作業は企業内で行いました。その後、目標にしていた機械を10カ月間で完成させることが出来ました。当初、発注した機械の原形は判らなくなるくらいに変貌し、同じ仕様の2号機は、外部に丸ごと発注しましたが、その価格は当初に発注した機械の半額以下でした。
 
 この様にして開発した機械により供給力・品質・コストで他社が販売している類似の焼き菓子よりも優位な商品が出来るようになり、市場から高い評価を得て、成長の原動力になりました。
 

2.事例:開発した生産設備の商品化

 電子部品を受注生産しているK社では、PPM(百万分の一)単位の不良率を目指して生産技術の向上に取り組んでいました。その中で大手素材メ-カ-から購入している金属素材の表面処理加工が原因ではないか、と思われる不良が集中的に発生することがしばしばありました。
 
 疑いを持っても、素材が原因であると証明出来るデ-タが無く、購入先にクレ-ムを付けることが出来ません。電子部品の検査方法は目視と、一つずつ検査機に掛ける性能検査で成り立っています。検査工程は最も手数を要するネック工程になっていて、工程の流れの障害になっているだけでなく、検査ミスによる出荷後のクレ-ム発生の原因工程にもなっていました。
 
 市販品の中に適当な検査設備が無く、かつ、社内にマイクロエレクトロニクスの技術者が不足していることもあり、検査工程の自動化が先送りされていました。いつまでもこのままではいけないと経営者が判断し、異業種交流で親しくなった社外の技術者に協力を求め、自動検査機の開発に取り組むことにしました。所定の検査を行うだけでなく、検査結果を自動記録する事が出来ることを目的にして開発が行われました。記録することが出来れば、後の分類集計が簡単に出来、不良品発生の再発防止に力を注ぐ時間的な余裕が得られることを目的に、検査機の開発が行われました。
 
 試作品のテストで光センサ-の感度が良くなく、かつ、外部から差し込む太陽光線を拾って誤って反応すること等があり、数回の改造の後、自動検査機が開発されました。開発された検査機の稼働開始の結果、当初から疑問を抱いていた購入素材の品質に問題があることが実証出来ました。このデ-タを添えて、購入先である大手の素材メ-カ-にクレ-ムをつけました。その結果、今まで口頭で疑問を挟んでいた時に相手にされなかったことが、素材メ-カ-から丁重な謝りの言葉が得られるに至りました。100名に満たない中小企業が、国際的な大企業に対して、クレ-ムをつけ、相手の生産ラインの改造を決意させるに至った事例です。納入される素材に添付されてくるミルシ-トに記載されている特定の記号と、品質不良の発生との間に関連性があることが判り、それに基づいて素材メ-カ-の生産ラインの問題点を追求する端緒になったのです。
 
 その後、この企業への来訪者が自動検査機を見て、何処で購入したのか、供給してくれないか、との問い合わせが多数入るようになり、遂にこの検査機を商品化することになりました。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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