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品質工学会の技術向上委員会で品質工学とその関連分野の用語を定義する活動をしていました.その活動の中で狩野モデルが用語定義の対象となり,品質工学との関係の説明を含めて狩野モデルを定義することになりました.狩野モデルに関しては品質工学との関係を含めて自分なりの定義を持っていたのですが,改めて考えてみると視点の違いによって狩野モデルの説明が変わることに気づいたのです.それをこの事例記事で共有化したいと思います.
1. 「一元品質」「当たり前品質」「魅力品質」の定義
一元品質,当たり前品質,魅力品質の3つを簡潔に定義することはできます.例えば以下のようです.
- 一元品質:充足度に応じて満足度向上 カタログスペックなど
- 当たり前品質:充足度を向上させても満足度向上しないが,充足度が不十分だと不満足となる 不具合など
- 魅力品質:充足されていなくても不満とはならない 充足されると満...
ここで,私の仮説は,「一元が感度や性能,当たり前がロバスト性で両者はトレードオフする」ですが,これがどうも違うケースもあるなと気づきました.
(1)自動車の燃費
その例が自動車の燃費です.
燃費が良くなればなるほどお客様の満足度が高まるので燃費は一元品質です.それを実現する手段はエネルギー効率を高めることです.品質工学的にはy=βMのMをガソリンの化学的エネルギー,yを回転エネルギーとしたときのβを高くすれば燃費が改善します.
このβを高めれば高めるほど満足度が向上するのでβも一元的品質であり,βと燃費はトレードオフしません.では自動車のエンジンの当たり前Qは何か???複写機などの画像製品,光ディスクやハードディスクなどの記録デバイスと自動車では何かが違うようです.
(2)複写プリンタの印刷速度
一方で,私が技術開発に関わった複写プリンタや光ディスクでは一元Qが性能、当たり前Qがロバスト性という関係が以下のように成り立ちます.
複写プリンタの印刷速度,これは明らかに一元Q 用紙搬送速度UP自体はモータ設定変えるだけなので簡単.でも用紙搬送速度を高くすればするほどジャム率が増える.
ジャム率は当たり前Q
・1回/年を1回/2年に低減しても満足度向上ほぼなしです.つまり用紙搬送速度UPさせて印刷速度UPさせる原動力は用紙搬送のロバスト性を高めること
光ディスクや磁気ディスク(HDD)も同様
一元Q:記録容量 マークを小さくすること
マークを小さくすればするほど高温でマーク形状が乱れるなどの不安定性が増大,よってマークのロバスト性確保=当たり前Qの確保が記録容量UPの原動力です.
次回に続きます。
【出典】QECompass HPより、筆者のご承諾により編集して掲載
◆[エキスパート会員インタビュー記事] 品質工学の魅力とその創造性への影響(細川 哲夫 氏)
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