コストを明確にして、評価できる人材を育成する過程を、二回に分けて解説していますが、
その1に続いて解説します。今回は、その2です。
1.アウトプット
最終的なアウトプットは、Excelによるコスト見積りプログラムを開発し、そのプログラムを活用してコストを算出することです。そのステップの中で、以下の資料を作成・整備をすることになります。
・製品や部品をつくるために自社で必要とする設備機械
・その設備機械の詳細工程と制約条件
・機械加工時間の算出のための計算式
・付帯作業時間の設定等。
そして、コスト見積りの入力操作の効率化を図るために、図面の寸法や形状を入力することによって、コスト算出できるようにします。これは、図面の寸法や形状などの情報対して、加工の手順と使用する工具(ツール)などについてまとめることです。
例えば、図面では、厚さ10㎜の鋼板に直径50㎜の穴があいているとします。この場合、加工の手順は、センタ穴あけ→穴あけ→穴あけという3工程が必要になり、工具は、センタ穴ドリル、直径30㎜ドリル、直径50㎜ドリルの3本を使うことになります。これらの手順と工具について、図面の直径50㎜という寸法と厚さ10㎜を入力したならば、Excelで3つの工程と工具をもとに自動的に計算し、コストを求めるようにするのです。この内容は、加工に関するノウハウです。
したがって、Excelでのコスト見積り入力操作するためのコスト見積りプログラム運用マニュアルを作成し、そのマニュアルに反映させます。この運用マニュアルを作成することによって、Excelでのコスト見積り入力操作ができるようになるとともに、算出されたコスト値の検証のできる人材を育成するために役立てることができるのです。
2.研修効果の測定
研修の効果測定は、実務で活用する中で判断することにしました。その評価項目と成果について図1.研修効果の評価に示します。
図1.研修効果の評価測定
具体的な成果例を備考欄に掲載しましたが、従来の顧客と経験則をもとにした価格交渉から、顧客と同じ理論性を持ったコスト値での価格交渉を進めるようになったことです。そして、実際の価格交渉で、顧客からS社の提示した見積り金額に納得してもらえたことです。
さらに、協力会社との価格交渉では、理論的なコスト値での説得について、納得してもらったうえでコストダウンを達成できたことです。価格交渉におけるコスト理論の活用は、高圧的姿勢や力関係ではなく、理論をもとにした説得と納得の関係にあります。この説得と納得の関係が成り立つことです。
最後に経営幹部の方が述べておりましたが、もっとも大きな成果は、コストに関するスペシャリストであるコストエンジニアを育成できたことであるそうです。社内の人材を有効に活用できたことが、大きいということです。
3.今後の展開
研修例では、製品分析を行った結果、主要な機械加工や板金加工を中心にコスト見積りプログラムを開発しました。この見積りプログラムを積極的に活用するためには、多くの社員に使ってもらうことが大切です。
このためコスト見積りプログラムの使い方について、プロジェクト・リーダー...
を中心にメンバー教育を行っています。そして、運用マニュアルの説明不足部分や追加などの見直しを図っています。さらに、この運用マニュアルを生かして多くの社員に操作およびコスト教育を進めることになっています。
また、また不足している研削加工や熱処理、表面処理加工を含め、追加すべき工程や設備機械があります。これらについて、情報の収集や計算方法の設定、見積りプログラムの開発を進めていくことになります。そして、この研修を進めていく中で発見したコスト改善の着眼点を整理し、体系的にまとめ、コスト改善計画書を立案し、実行に移すことになります。
プロジェクト・リーダーは、これまでの研修を通じて、コストマネジメント体制のための情報整備は継続すべきものであり、レベルアップを図っていかなければいけないと強い意思もって臨んでいます。