【目指すべき開発体制 連載目次】
前回のその1に続いて解説します。擦り合わせ型と組み合わせ型、皆さんが開発している製品はどちらのタイプでしょうか。家電を中心としたセットメーカーの方、マイクロプロセッサーやメモリーなどの半導体、パソコンなどのコンピュータ関連機器、携帯電話などの通信機器の方ですと、これらはすべて製品アーキテクチャから見ると「組み合わせ型」です。
では、組織能力や能力構築環境から見るとどちらのタイプでしょうか。製品アーキテクチャが「組み合わせ型」であるにもかかわらず、従来の日本企業文化を引きずっているため「擦り合わせ型」となっているところが多いと思います。そのため、図11 で電気電子製品と表現している部分のようにねじれた仕組みとなっています。つまり、部品やモジュールのユニークな組み合わせや、開発やロジスティックの効率化、短縮化などで差別化すべき製品にもかかわらず、調整能力に長けた、良くも悪くもスーパーマン、あるいは何でも屋が集まって開発しているということです。
図11.擦り合わせと組み合わせとがねじれた開発
製品アーキテクチャが「組み合わせ型」であるため、欧米や中国との開発競争で短期間、低コストの開発を強いられるのですが、開発現場は頻繁な「擦り合わせ」を必要とするためかなり非効率な開発になってしまいます。開発の基本の枠組みがねじれているためにこの非効率性は避けることができません。そして、技術者は何とかしようと個人的にがんばることで疲弊してしまうのです。
問題解決のためにはねじれを解消すればよいのですが、組織能力や能力構築環境は組織文化、企業文化そのものですから一朝一夕で変えることは非常に困難です。しかし、「擦り合わせ」能力は日本技術者が生来持っている強み、つまり、DNAレベルの強みととらえ、その強みを活かす方策を考えることは可能だと思います。このねじれを課題と考えるのではなく、競争優位性確保のための差別化要因...
と考えるわけです。うまく対応できれば、欧米や中国との「組み合わせ型」の開発競争で本質的な差別化を実現することも可能です。
次回、その3では「組み合わせ型」製品に「擦り合わせ型」組織文化を適用するための工夫(仕組み)について考察します。基本的な考え方は、調整作業に代表される「擦り合わせ」による非効率な部分をどのようにしてなくすかです。