クリーンルームで使用するテープについて

 クリーンルーム内ではテープを使用しない方が良いのですが、どうしても必要な場合もありますので、そのことについて解説します。

 クリーンルーム外で掲示の時に使う場合は、セロテープが一般的です。清浄度が高いクリーンルームではテープ一つをとっても、持ち込みや使い方などに色々な制限があると思います。逆に清浄度の低いクリーンルームでは、セロテープをそのまま持ち込んでいる場合もあると思います。
 

1.セロテープからの発塵

 一般的なセロテープは、芯がボール紙でできています。このボール紙はパルプが主原料であり、これが発塵のもとになります。パルプは繊維が短いので、それ同士の絡みが少なく、ゴミとして出て来ます。新聞紙もパルプを原料としています。黒っぽい背広を着て新聞を読んだりすると、新聞から出たゴミが背広に付着して困ったという経験をお持ちの方もいると思います。

 過去、クリーンルーム用テープは米国などから輸入した物がありましたが、非常に高価でした。購入費用を考慮し、国内メーカーのものをボール紙の芯を苦労して抜いて使っているところもありました。最近では国内メーカーでも芯がプラスチックのものが普及してきました。セロテープ代わりにスコッチテープを使う場合もあると思いますが、これは芯はプラスチックですが、テープ自体が切れやすいようで、剥がす時に綺麗に剥がせません。テープの切れ端が残ったり、粘着剤が残ったりしますので、アルコールなどを使って汚れを落とす場合もあります。
 

2.安全上の問題

 事故事例では、掲示物をエアシャワー内に貼って、その後、掲示物を除去した時に粘着剤が残ってしまいました。これをアルコールを使ってクリーニングしようとしたところ、エアシャワーのジェットが動いてしまい、一気にその雰囲気が広がりました。それを作業者が吸ってしまって具合が悪くなったという安全上の事例があります。有機溶剤は、気化すると体積が異常に大きくなります。それがジェット気流で素早く拡散しますのでどうしても吸ってしまいます。現場には有機溶剤などの作業主任者がいると思いますので、日頃から意識していて、指導していただきたいと思います。
 

3.テープの評価方法

 テープを剥がすと粘着剤が残ってしまう場合があります。簡単な評価方法を紹介します。まず、少し長めに引き出し、粘着面を内側にして U の字に折ります。その粘着面を両側から押しつけ相互に付着させます。今度はそれを元のように剥がします。この時、綺麗に剥がせればいいのですが、粘着剤が部分的に剥がれどちらかに付着して行ってしまうものがあります。これは、テープを剥がしたときに、その面に部分的に粘着剤が残るということです。
 

4.品質への影響

 剥がした後、粘着剤が残ったものは時間経過とともに硬化し、ボロボロと砂のようなゴミが出ます。作業エリアや、クリーンベンチの内側などに掲示物を見かけますが、製品に近いところでこのようなゴミが発生し、落下、飛散、浮遊することで品質への影響も懸念されます。

 例えば、作業者に何かの連絡、或いは技術や品質部門からの指示などを伝えたいときに、作業者の目につきやすいよう、設備の正面などに貼ってある場合があります。作業者の正面、或いは作業者との距...
離が近い場合は、接触なども起きます。ここで発生したゴミが落下すると、その下にある加工中の製品などに付着、或いは混入することがあります。

 一つの動作・行動でも、品質、作業効率、環境面(気流等による飛散、汚染など)、安全面などに支障、影響はないかなど多面的に判断しましょう。現場の経験が長い方は、おそらく瞬時に判断するのではないかと思います。

 なお、最近では、使い終わったプラスチックの芯を回収するメーカーもあるようです。ちょっとした、小さなことですが、良く観察したり細かな心遣いを繰り返すことで、注意力が高められたり、何か変だということに気づくことに繋がります。やがてそれは感性に繋がります。『クリーン化は感性だ!』と良く言われますが、このような努力の継続の結果、感性が育つのです。
 

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