クリーン化の目的の下記4点から、今回は、(3)CSの向上(Audit対応)、翻ってCSの向上につなげることについて解説します。
(1)歩留まりを向上させ、コスト削減に貢献すること
(2)品質向上、特にゴミによる品質問題、クレームを出さないこと
(3)CSの向上(Audit対応)、翻ってCSの向上につなげること
(4)生産設備、付帯設備の予防保全、延命化に貢献すること
1. 監査
客先から注文を受ける、或いは契約前に、その客先から監査(=Audit)がある場合があります。仕事を依頼するに相応しいかどうかを確認するわけです。また、契約したあと、継続して受注関係にある場合も定期的に監査があるでしょう。この監査は、具体的には机上監査と現場監査があるのが普通です。
机上監査では、標準類や品質システムの確認、教育の仕組みなど、書類関係が主です。また現場監査では、自分たちが注文した製品はどんな環境で作られるのかを確認します。例えば、環境面(ゴミや清掃状況などクリーン化に関するもの)、品質の作り込み関係、標準類との整合性、安全など多岐にわたります。
また、机上監査の内容を現場で確認することもあります。例えば、オペレータに作業をさせてみて、標準通りかなどを確認する場合もありますから、その時、その場だけ何とか取り繕ろうというのはボロが出ます。そうすると次から次へと厳しく見られます。監査者の中に現場に詳しい人やクリーン化に詳しい人がいれば、当然指摘も厳しくなります。
2. 現場監査
主にこの現場監査について説明します。「もう少し綺麗にしてください」などゴミの問題や清掃の仕方などの指摘が割と多いのではないでしょうか。そこでクリーン化視点で一生懸命綺麗にし、それを継続していくと綺麗な現場になって行くと思います。客先に納入する製品はこのような環境で作っていますと、胸を張って見てもらえるよう努力する。お客様の満足度(CS)を向上させようということです。そこに監査が入り、『私たちに納入してくれる製品は、こんなにきれいな環境で作ってくれているんですね』と稀に褒められることがあります。
いつも指摘されたり改善を要求されてばかりで、褒められることがない中で、褒められるとその場に立ち会ったメンバーは気持ちが高揚します。またクレームがつくのか、厳しい指摘があるのかと、ある程度覚悟している部分もあると思います。そこで褒められるわけですから気が楽になったり、喜びを感じます。そして『また褒められたいとか、もっと良いものを作ろう』という気持ちになります。
つまり、CS向上を目的として現場を綺麗にしていく。その努力してきたことが褒められると、このように従業員の満足度、社員満足(ES)が向上するということに繋がります。無形ですが、大きな価値、宝物になります。
3. 顧客満足向上、社員満足向上
私が在社中に赴任していた工場で、後工程のある現場担当の管理職が、客先監査終了後すぐに私のところに飛んできたことがありました。喜びを隠しきれない様子でニコニコしながら、「今日の監査で褒められました。日頃の指導、アドバイスありがとうございました」と言ってきました。本来なら、後で、或いは電話で済ませてしまうようなことかもしれませんが、あまりに嬉しかったのでしょう。その現場と私の居室は建物も違い、距離が離れていましたが、直接報告したいと息を切らしながら来てくれました。客先監査の対応で、顧客満足:CSを向上させようとした結果、社員満足:ESの向上に繋がったのです。
こんな例もあります。机上監査で時間がかかってしまい、現場監査の時間が少なくなった。飛行機や電車の時間の関係で伸ばすわけにはいかない。このような場合、現場監査は省き、机上監査だけで引き上げてしまう客先もあります。でも、ある客先は、現場をじっくり確認する時間がないが、現場はその製品がつくられているところなので、短時間でもいいから現場を見ますと言って、床だけ確認して帰ったという例です。
なぜ床だけかとい...
うことですが、清掃の手順は上から下へ、奥から手前へというのが基本です。つまり最後に手を付けるところが床なので、その床が綺麗ならそれ以前の部分もきちんとされているだろうという説明でした。応接室や会議室で会社説明がされ、その時スクリーンなどで見せられる現場の写真などを見て、綺麗な工場だと感心していてはいけないのです。事実は現場にあるということです。私は毎日というくらい頻繁に現場に入りました。
日々現場に入ると沢山の感動にも出会えます。『現場とはその場に現れる』と書きますが、現場は生きていると感じます。毎日違うのです。多くの方にこのような経験をしていただきたいと思います。
*CS向上=顧客満足度(Customer Satisfaction)向上
*ES向上=従業員の満足度(Employee Satisfaction)向上