環境経営 CSR(その5)
2017-02-08
新環境経営への取組みについての話題を提供するにあたり、今回からはCSR(Corporate Social Responsibility)について、その歴史から振り返ります。
日本では、CSRの言葉が広まり始める前から「企業の社会的責任」の議論が行われてきており、戦後の企業の不祥事や企業批判が起こる度に、企業が反省・自戒するパターンを繰り返してきました。ニッセイ基礎研『日本の「企業の社会的責任」の系譜』(2004.5)によれば、第1期は1960年代の産業公害に対して、第2期は1970年代の石油ショック時の便乗値上げに対して、第3期は1980年代の急激な円高&地価高騰に対して、第4期は1990年代のバブル経済破綻&銀行倒産に対して、そして第5期が2000年代の食品偽装事件等の企業の不祥事対して、です。こうして2003年にCSRの組織を設置する企業が増大しました(CSR経営元年)。
日本でCSRの言葉が広まり始めたのは、経済同友会が2003年にまとめた「第15回企業白書」の中に記載された頃からです。経済同友会の第15回企業白書は、前代表幹事小林陽太郎氏のイニシャティブでまとめられたもので、「市場主義宣言」や「市場主義宣言」を超えて「市場の進化」等、の議論の中で企業のあるべき姿として取り上げられました。その経緯は、書籍「小林陽太郎、性善説の経営」の中で詳しく紹介されています。小林陽太郎氏によれば、そもそもCSRは企業活動全般のことであって、企業が上げた利潤の中からメセナ活動を行ったり環境保護活動を行ったりということではない、と明言されています。私も至極当たり前のことと思いますが、日本ではこれまでも今でも、本業とは繋がらないメセナや環境保護活動がCSR(企業の社会的貢献)と誤解されている部分があります。
アメリカでは、1990年代の後半から企業は利益を追求するだけでなく法律の遵守、環境への配慮、コミュニティーへの貢献などが求められ、企業の社会的責任が問われるようになりました。2000年代になると企業改革・更生法ともいえるサーベ...
ンス・オックスレー法(SOX法)が成立されていくなど、企業に対する社会的責任を法律で定めていくというような法的整備・拘束等が進められていくようになりました。また、そのような法的整備と企業の社会環境が整えられて変わっていくと同時に労働者の人権の保護に関しても国際的に関心が高まるようになりました。その背景には企業活動がグローバル化し、先進国の多国籍企業が発展途上国の労働者を雇うケースが増え、さまざまな問題が発生したことがあります。その為、アメリカ政府は企業が起すこれらの諸問題に対応していく為、様々な対策を講じていく事となりました。
次回からは日本のCSRが歩んできた歴史を振り返ります。