スマートグリッド :新環境経営 (その30)
2017-05-31
新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。
これまでは環境経営の視点で、過去に積み上げられてきた知恵を整理してきましたが、これからは、それら知恵の基盤の上に、ICTの支援を受けて、更に効率よく、同じ間違いを繰り返さないことを実現する時代に入りました。前回からスマートXXXXを取り上げています。今回はスマートグリッドです。
元々は、米国の脆弱な送配電網を、コンピュータ技術によって低コストで安全に運用する手法を模索する過程で生まれた構想です。通信・制御機能を付加した電力網で、スマートメーター等の通信・制御機能を活用して停電防止や送電調整のほか多様な電力契約の実現や人件費削減等を可能にした電力網です。当初の概念では、「スマート」とは発電設備から末端の電力機器までを、マイクロ・コンピュータ内蔵の高機能な電力制御装置同士をネットワークで結び合わせ、従来型の中央制御では達成できない自律分散的な制御方式を取り入れることで、電力網内での需給バランスの最適化調整と事故や過負荷などに対する抗堪性を高め、それらに要するコストを最小に抑えることを目的としていました。電力を使用するそれぞれのポイントをグリッドに見立てて、そのグリッドへの電力受給を、ICTで無駄なく制御しようというものです。
電力供給者と需要者をデジタル通信線によって結ぶアイデアに、家庭電化製品のネットワーク化推進に失敗していたメーカーやデジタル通信用のデバイス・メーカー、さらにはITネットワークを主導している企業までが、家庭へデジタル回線を引き込む良い機会と捉えて大きな関心を寄せるようになりました。
米国が新たな電力網に"Smart Grid"と名づけて新たな産業分野を作ると、同様の動きが他の先進各国でも生じました。欧州は米国同様の構想で、域内の電力網の再構築・向上を検討しています。欧米や日本で電気自動車、太陽光発電などが推進され始めたのも、米国が官民を挙げて次世代の送配電網の必要性を論じるきっかけとなりました。
日本は自家発電や蓄電を推進する住宅・自動車・家電、石油、ガス業界が積極的な一方、現行の電力網で電力供給が安定して運営されていることもあり、当初、電力業界では積極的な動きは少ないかったですが、2011年に政府が5年間でスマートメーター4000万台の導入計画を発表してから動向が変わりました。電力の送電網/配電網とその周辺の将来技術の予想や電力需要の量的・質的予想、技術開発と規格統一といった多くの課題がありますが、電力網全体に新技術を盛り込んだデジタル式の通信および電力制御を行う装置を配置するだけでも、巨額投資が見込めるため、電力機器メーカーや設備工事業者だけでなく、自動車メーカーやデジタル通信装置に関わる多くの関連業界が新市場と捉えました。特にこうした分野に技術的優位性を持つ日本や米国などでは官民一体で推進しており、周辺産業界とも協力してまずは国際的な標準化の確立を目指しています。
スマートグリッドのコンセプトが定着してきたところに...
、デジタルグリッドなる言葉が使われだしました。デジタルグリッドは、インターネットに着想を得た、電力/情報/金融を統合させた新しい技術です。今後複雑化する需給情報の管理や発電量の安定性など、新たな課題が予測されており、こうした課題を解決するために、電力を識別し、必要に応じて電力を融通することを可能にするものです。
蓄電能力を活用してピークをずらす(シフトする)ことで、契約電力を下げられ電力料金の節約になります。又、災害や事故などで送電がストップしても、発電や蓄電した電力をコミュニティ内(セル)で電気を融通しあえます。更に、ネットワーク上の情報から、電力の生産者を識別できる「カラーリング技術」により希望する電力の選択が容易となりました。まさに、電力需給と経済の統合を狙うものです。次回は、スマートタウンについて解説します。