物流業の波動と平準化
2017-07-28
物流業界は波動が大きい業界といわれています。お中元やお歳暮が波動をもたらす要因です。海上輸送ではクリスマスシーズンが始まる前のアジアから北米への輸送が典型的でしょう。物流業ではこの波動に対応するためのインフラを抱えています。一時的に膨らむ物量に対応できる倉庫、大量な貨物を輸送するためのトラック、そして、それらのオペレーションのために必要な人員です。当然これらのインフラはコストとして価格に反映されていきます。そうでなければ物流会社はどこもやっていけないからです。
一方で常にピークを意識してインフラを抱えていれば、閑散期にはそのインフラが遊んでしまうことになります。せっかく保有している能力を発揮できないことになるのです。これほど不経済な話はありません。これらの閑散期を埋める仕事を見つけてこそ、はじめて儲かる物流が実現できます。お中元、お歳暮などによる仕事のピークについては、外的要因となりますので、それは、所与条件と考えられます。
また、自ら作り出している波動もあります。そう自分で作った繁閑差に苦しんでいる事例です。その一つにトラックに積み込む前の出荷準備作業があります。この準備作業を特定の時間に集中的に実施することでいろいろなロスを生じさせているのです。ロスの第一に人員の作業の繁閑差があります。出荷準備が集中的に行われるためにその時間帯はめっぽう忙しいのですが、それ以外の時間帯になるとやることが無くなってしまうのです。社員を仕事がないからといって帰したり給料を払わなかったりするわけにはいきません。そこでその分だけ会社がロスを被ることになるのです。
出荷準備作業の集中化によって物流作業者の仕事に繁閑差が出てしまい、出荷準備作業が集中すればそれだけ広いスペースが必要になります。同じ出荷準備スペースを何回転かさせることによって本来なら小さくて済むスペースが、出荷集中によってその何倍ものエリアが必要になることがあります。この出荷準備作業が集中するのはトラックの出発時刻が集中していることが要因ではないでしょうか。トラックが一定の時間帯に一斉に出発する計画にしていれば、準備作業も集中せざるを得なくなります。
しかし、本当にトラックの出発時刻は集中するものなのでしょうか。これは突き詰めて考えてみる必要がありそうです。もしかしたら出荷先と調整することで出発時刻を分散させることが可能かもしれません。しかし、こういった調整はそもそも無理だという思い込みは無いでしょうか。固定観念を持っていると改善が阻害されがちです。なぜその時間帯でなければならないのかについて検討することから始めましょう。
工場内物流で特定の時間帯に工場内通路が渋滞するという事象がありました。この要因を探ってみると、部品納入の時刻が集中していることに気づきました。なぜ部品納入の時刻が集中するかを調べてみると、部品調達担当者が部品在庫を絞り、朝一番に部品が入ってこないと生産ラインに支障が出ることがわかりました。この調達方法によって、工場内物流の担当者は午前中は忙しいものの、夕方以降は仕事が無くなる現象が起きていたのです。この事例も自ら作り出した仕事の波動であり、それが現場作業者の繁閑差につながってしまっていたのです。
工場で部品納入が朝一番に集中することは、担当者の発注の仕方と在庫の持ち方に原因があることを述べましたが、納入された部品は荷降ろし場にずっと置いておくわけにはいきませんので、物流作業者がせっせと在庫置き場に運搬作業を始めたます。この結果として工場内通路の渋滞、物流作業者の繁閑差が発生し、仕事上のロスと安全上の問題を引き起こします。そこでこの納入を一日の中で分散させることで問題点を解消することにしました。これによって朝から夕方まで平均して仕事をするようになります。これを仕事の「平準化」と呼びます。今まで物流は集中するものだというのは固定観念に過ぎなかったわけです。
結果的に平準化されること...
で荷降ろし場がすっきりとしました。ピークで抱えていた物流作業者を減らすことができました。通路上の渋滞も緩和されました。物流作業に波動があるのではなく、波動を作り出していると言った方がふさわしいと思います。まず仕事は平準化することが第一と考えるべきなのです。物流倉庫では入庫の時間帯、出庫の時間帯、出荷準備の時間帯、トラック積み込みの時間帯といった、時間帯別の仕事の仕方をしているところが多いと思います。
しかし、これを一日の中で平準化していくことを考えてみてはいかがでしょうか。そのためにまずは、一日物流作業者の稼働分析を実施してみましょう。もし作業のばらつきや繁閑差があるのであれば改善の余地があると考えるべきです。外的要因はともかくとして、自ら波動を作り出して仕事の効率を落とすことはやめましょう。取引先と調整することも必要になりますが、それについても相手に相談することをためらわずに実施しましょう。意外と要望に応じてくれることもあると思われます。