全員参加の省エネ

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省エネルギー 
 省エネルギーを一部の専門家だけの活動にしてしまうとすぐに行き詰まります。多く見られるのは設備部門や工務部門に任せっきりにしてしまっている活動です。このような場合、設備部門からは「計画的にインバーターを導入しているのに、運転モードに対応して回転数を変える使い方をしてくれない」などという声にあらわれてきます。この例ではインバーターとしましたが、すべての省エネ機器に入れ替えていただいても通じます。一方、製造部門からは「設備部門ではLED化を進めているが、更衣室だとか倉庫だとか点灯必要時間の短いところばかりを優先的に入れているのはおかしいのではないか」と他人事のような意見にあらわれてきます。
 
 省エネルギーで行き詰まりを見せている事業所ではその主な原因が活動体制にあるというのは本当です。省エネ活動を企画したり推進したりする立場にある方にはこのところはしっかりした考え方を持っていただく必要があります。私の経験から言えることを書きますので参考にしていただきたく思います。
 
 第1は、省エネの専門家と言っても本当にすべてに精通している方は極めて少なく、一部の領域の専門家でしかないということです。それだけ省エネルギーの領域は広いといえるのかもしれません。設備部門が省エネを担当する例を多く見てきました。確かに設備メーカーが様々な専門診断を有償、無償で行っていますのでその業務に従事している技術者との接点が多いのは設備部門です(例えばポンプ診断、蒸気漏れ診断など)
 
 しかし、彼らは「設備の働き」の専門家でしかありませんので、使い方、すなわち「設備の目的」については(極めて稀な例はあるものの)確信があるわけでもありません(設備の使い方の専門家はやはり自分たちの工場の製造部門の方々でしょう)。また、設備と一口に言っても、用役や動力設備のような極めて専門性の高い設備もあれば、炉に代表される熱設備、制御系の様々な設備(センサー、コントローラー、バルブ、ダンパー、演算ユニット等)、電力関連の設備もあり、設備の専門家だけでもたくさんの人を集める必要が出てきます。
 
 最も身近なのは「エネルギー管理士」の資格を持っている方でしょう。大変優秀なエネルギー管理士さんがいるには違いないと思いますが、どちらかというと、熱やエネルギー計算は得意で省エネルギー法に詳しいくらいの専門家でしかありません。ボイラー技士になれば詳しいことはそれ以上ないほどですが、更に限定された領域となります。従って、専門家の活動とすると大きな成果に結びつけることができるのは間違いありませんが、多くの専門家を結集する必要が出てきて、結果的に皆で取り組むことになってしまいます。
 
 第2は、省エネ技術はすべての技術者と一部の事務系の方(もしかしたら営業の方も)が基本スキルとして、その一部だけでもいいので身につけるものと考えるからです。パソコンのビジネスソフトを操れることと似ているかもしれません。銅の加工部門で省エネルギーに本格的に取り組むことにした時、中心となる人財を他部門から持って来ざるを得ない事態となりました(こういう例はかなり多いと思われます)。省エネルギーセンターの実践セミナーを受けたり、炉メーカーから技術指導を受けたり、製造現場や保全スタッフからも協力を受けながら勉強し、8ヶ月間で多くの改善を進めることができましたが、本命の焼き付け炉の工程での効果は大きなものではありませんでした。その前段工程の焼鈍炉関係では立派な改善が達成されましたので、勉強不足が顕在化しただけで彼の省エネスキルは上がったと思いました。“省エネのスキルが上がったのは、ものづくりのスキルが上がったからだ。省エネ技術は必要になった都度、泥縄式で勉強すればなんとかなる(というよりはその方が早く身につく)”というのが率直な感想でした。この考えは今も変わりません。
 
 省エネスキルを身につけた人財を増やすことができれば、それぞれの日常業務がいかに忙しくとも、頭数を増やして取り組んだ方が圧倒的に強くなります。
 
 第3は、多くの領域の技術が必要になるのですから、最初から専門的なことは専門部門に任せるようにして必要...
省エネルギー 
 省エネルギーを一部の専門家だけの活動にしてしまうとすぐに行き詰まります。多く見られるのは設備部門や工務部門に任せっきりにしてしまっている活動です。このような場合、設備部門からは「計画的にインバーターを導入しているのに、運転モードに対応して回転数を変える使い方をしてくれない」などという声にあらわれてきます。この例ではインバーターとしましたが、すべての省エネ機器に入れ替えていただいても通じます。一方、製造部門からは「設備部門ではLED化を進めているが、更衣室だとか倉庫だとか点灯必要時間の短いところばかりを優先的に入れているのはおかしいのではないか」と他人事のような意見にあらわれてきます。
 
 省エネルギーで行き詰まりを見せている事業所ではその主な原因が活動体制にあるというのは本当です。省エネ活動を企画したり推進したりする立場にある方にはこのところはしっかりした考え方を持っていただく必要があります。私の経験から言えることを書きますので参考にしていただきたく思います。
 
 第1は、省エネの専門家と言っても本当にすべてに精通している方は極めて少なく、一部の領域の専門家でしかないということです。それだけ省エネルギーの領域は広いといえるのかもしれません。設備部門が省エネを担当する例を多く見てきました。確かに設備メーカーが様々な専門診断を有償、無償で行っていますのでその業務に従事している技術者との接点が多いのは設備部門です(例えばポンプ診断、蒸気漏れ診断など)
 
 しかし、彼らは「設備の働き」の専門家でしかありませんので、使い方、すなわち「設備の目的」については(極めて稀な例はあるものの)確信があるわけでもありません(設備の使い方の専門家はやはり自分たちの工場の製造部門の方々でしょう)。また、設備と一口に言っても、用役や動力設備のような極めて専門性の高い設備もあれば、炉に代表される熱設備、制御系の様々な設備(センサー、コントローラー、バルブ、ダンパー、演算ユニット等)、電力関連の設備もあり、設備の専門家だけでもたくさんの人を集める必要が出てきます。
 
 最も身近なのは「エネルギー管理士」の資格を持っている方でしょう。大変優秀なエネルギー管理士さんがいるには違いないと思いますが、どちらかというと、熱やエネルギー計算は得意で省エネルギー法に詳しいくらいの専門家でしかありません。ボイラー技士になれば詳しいことはそれ以上ないほどですが、更に限定された領域となります。従って、専門家の活動とすると大きな成果に結びつけることができるのは間違いありませんが、多くの専門家を結集する必要が出てきて、結果的に皆で取り組むことになってしまいます。
 
 第2は、省エネ技術はすべての技術者と一部の事務系の方(もしかしたら営業の方も)が基本スキルとして、その一部だけでもいいので身につけるものと考えるからです。パソコンのビジネスソフトを操れることと似ているかもしれません。銅の加工部門で省エネルギーに本格的に取り組むことにした時、中心となる人財を他部門から持って来ざるを得ない事態となりました(こういう例はかなり多いと思われます)。省エネルギーセンターの実践セミナーを受けたり、炉メーカーから技術指導を受けたり、製造現場や保全スタッフからも協力を受けながら勉強し、8ヶ月間で多くの改善を進めることができましたが、本命の焼き付け炉の工程での効果は大きなものではありませんでした。その前段工程の焼鈍炉関係では立派な改善が達成されましたので、勉強不足が顕在化しただけで彼の省エネスキルは上がったと思いました。“省エネのスキルが上がったのは、ものづくりのスキルが上がったからだ。省エネ技術は必要になった都度、泥縄式で勉強すればなんとかなる(というよりはその方が早く身につく)”というのが率直な感想でした。この考えは今も変わりません。
 
 省エネスキルを身につけた人財を増やすことができれば、それぞれの日常業務がいかに忙しくとも、頭数を増やして取り組んだ方が圧倒的に強くなります。
 
 第3は、多くの領域の技術が必要になるのですから、最初から専門的なことは専門部門に任せるようにして必要な時に必要な人が参画できる(皆で)取り組む仕掛けを工夫した方がいいとなります。年に1回しか使わない伝熱計算は、技術部門に任せますし、電力量の測定は有資格者でなければ配線を触ることもできません。活動の最初のステップは、企画段階で設定された活動企画書に沿って、対象エネルギーがどこで使われ、どれだけ細かく測定されているか、見て回ることですが、この時は専門家は部分的な参画で構いません。
 
 「この設備の稼働状況を自動的に知るにはどうすればいいか、追加費用はどのくらいかかるか」などがわかればいいと思います。むしろ保全部門の方に、それぞれの設備の前回交換年月などを教えてもらった方がいいかもしれません。活動のステップごとにどのような専門家を結集するかを考案して、事前にアナウンスしておくことは決して無駄にはなりません。
 
 皆で進める省エネルギーの最初に、“皆でやらなければいけない”のはなぜかを自分としてしっかりと心に刻んでいただきたく、くどいことを承知で書きました。
  

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この記事の著者

石塚 健志

330件の指導実績/工場管理全般、中でも省エネルギー、歩留り・品質改善を得意とします

330件の指導実績/工場管理全般、中でも省エネルギー、歩留り・品質改善を得意とします


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