クリーンルーム清掃手順の事例 その2

1.中国工場の女性管理職の事例

 前回の事例、その1に続いて解説します。私が長く通っていた、中国、蘇州市のある工場では、女性の管理監督者がたくさんいました。 クリーン化担当者に、「この職場の課長さんは、清掃の仕方、手順は知っていますか?指導できますか?」と聞いたところ、その担当者が課長に、「清水老師に清掃をしているところを見せて下さい」と指示しました。

 するとその女性課長は、クリーンワイパー持って来て、“上から下、奥から手前へ”ときちんと拭いていました。更に驚いたことに、片方の手に持っていた懐中電灯で斜光により、拭き残しが無いか確認していました。 つまり、自分のやった仕事が良いかどうかの確認もしていたのです。 “一通り拭いた”で片づけてしまうことはしないということです。

 この工場は、当時社員1万人を抱えていました。この女性課長も1500人ほどの部下を受け持っている管理職ですが、きちんとやって見せられるんです。清掃標準を見せてもらったところ、清掃方法が記号化され、きちんと標準化されていました。

 日本の会社はどうでしょうか?

 

2.客先監査で床を見る

 お客様すなわち自分たちが作った製品を納入する会社から、監査を受けると言う場合があると思います。 多くの場合、机上監査と現場監査があります。 机上では、品質システムや技術などの書類監査、現場では、どんな環境で作られているかを見られます。

 過去にこんな事例がありました。机上監査で時間がかかり過ぎ、現場をゆっくり見る時間が無いと言うことでした。 監査者は、国内、あるいは海外等遠くから来る場合も多く、帰りの飛行機や電車の時間に間に合わせなければいけませんでした。残りの時間はあまりないが、短時間でも現場を見たいと言うことで現場に入り、床だけ確認して最終会議に臨んだと言うことでした。

 机上の監査は素晴らしくても、実際の現場は違う場合が多々ありますので、実際に現場を見る必要があります。いわゆる三現主義(現場、現実、現物)に基づく行動です。この事例で、時間が無かったので床だけ見た理由は、清掃は上から下へと言う手順が基本だからです。最後に手を付けられるのが床であるから、床が綺麗ならその上(製品加工の高さ)はきちんと清掃がされているだろうと言う判断でした。

 

3.天井付近にゴミが多い理由

 床付近はゴミが多いのですが、天井付近も汚れていると言うお話をしました。 それは、設備や照明、人の体温などで発生した熱により、気流が上昇(熱対流)し、それによって軽いゴミは一緒に上昇し、天井付近に滞留するために、パーティクル(微粒子)測定でも悪い結果が出るのです。

 通常、何も力が加わらない環境では、0.5ミクロン位の粒径のパーティクルが、浮遊するか、落下するかの分岐だそうです。ただ、人が歩いて巻き上げたゴミ、パーティクルは、熱の上昇により、更に高く持ち上げられますから、床清掃をきちんとして、減らしておくことが大事です。

 クリーン度の高い管理をしているクリーンルーム(層流式)以外は、このように天井付近にもパーティクルが...

滞留しやすくなりますが、その除去は難しいです。日頃から、持ち込みによるゴミを減らしたり、工場内でゴミを発生させる行為を少なくし、定期的な清掃を繰り返し、室内の汚れを減らして、クリーン度を上げて行くことが大切です。また、熱を発生する設備は、放熱防止用のラバーを設備に貼るなど、その影響を少なくする工夫をしているところも有ります。

 上昇気流によって天井付近に滞留した汚れは、年末年始等長期連休で工場を停止し、室内の温度が下がると、熱対流が無くなるので落下して来ます。そのままの状態では、長期連休後の設備には、埃が沢山積もり、真っ白になっていると言うことが起きます。工場停止時は、設備にカバーをするなどの対応で、設備を少しでも良い状態で維持・管理することが必要です。

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