1. 運送事業者の提供するサービス
物流事業者の場合は荷主が「お客様」、社内で物流を担当している部署の場合には物流の恩恵を受ける部署が「お客様」ということになりますが、いずれにしても、私たちはお客様に「喜ばれる物流サービスを提供する責務」があるのです。ですから常に喜ばれる物流サービスとはどのようなものなのかを考える必要があります。ではどのようにしたらそのような物流サービスを見つけることができるでしょうか。一番簡単な方法、それはお客様と話をすることです。
お客様が何を欲しているのかを知ることは非常に重要なことですから、いつもお客様と話をする機会をつくるように心がけることが望ましいのです。もう一つは、自分がお客の立場に立ったとしたら、どのようなサービスを提供してくれたら嬉しいのかを考えてみることです。ではまず物流事業者の立場でお客様に提供するサービスは何かを考えてみましょう。もし運送事業者であったらどのような物流サービスを提供しますか?
本業は運送ですから提供サービスは「運送」がベースになることが一般的です。ではどのような運送を提供しますか?
・地点間の運送
・チャーターでの運送
そうですね。普通のサービスであれば当たり前のメニューでしょう。もちろん、このようなサービスをお客様が欲していることは事実です。しかし、このようなサービスであれば競合他社のどこでもできるレベルです。ということは他社と差がつかないことになります。このような場合、お客様がメリットと感じることは何でしょうか。どこでもできる物流サービスの場合、どのようにしてお客様はサービス提供会社を決めるのでしょうか。それはずばり「価格」です。少しでも安いところからサービスを受けたいと考えるのです。なぜなら価格以外の条件に差が無いからです。
2. 今までの仕事の延長線上にチャンスあり
価格だけで選ばれる仕事は少々むなしさを感じざるを得ません。やはりその会社だからこそやって欲しい、その物流商品だから買いたいという評価はいただきたいものです。そのためには単純な運送では難しいので一工夫が求められます。その工夫はお客様との会話の中から見つけていくしかありません。顧客のところに行きづらい、お客様と話をすることは苦痛といっている限りは利益率の高い仕事は見つからないでしょう。そうはいっても実際には難しいという人のために、今回は少しヒントを示してきたいと思います。
まず、今までの仕事の延長線上にチャンスあり、という視点で見てみるとよいと思います。たとえば運送を行っているのであれば、その前に「荷揃え」という業務があります。そして配車を行うための「荷量計算」という仕事があります。このような仕事を運送にプラスアルファで提案してみてはいかがでしょうか。
さらに荷量計算を行うためのデータ整備などを請け負ってみることも一つです。荷主会社は物流をマネジメントできるスタッフは多く抱えていません。そのため物流に必要な最低限のデータすら整備できていない会社がたくさんあるのです。荷姿の縦・横・高さ寸法、そして荷姿重量などを作成してあげることは喜ばれること間違いありません。
また、運送が終わった後の工程もじっくりと見てみます。そうすると、届いた荷物を仕分けたり棚入れを行ったりしていることに気づくでしょう。ですからこのような構内物流業務を請け負うことを提案してみるのです。特別な技術が必要な仕事ではありませんから、すぐにでも対応が可能なはずです。もちろんセットで在庫管理業務を請け負うことも考えてみるとよいのではないでしょうか。
以上に示した業務すら請け負っていない会社が大半ですから、提案してみる価値は大きいと思います。特に物流マネジメント関連業務はよい価格で受注できる可能性が高いと思われます。ポイントは他社と少しでも差別化できる点です。何も背伸びしなくても差別化できる点などいくらでも見つかるでしょう。ではもっと価格も利益もよい業務をどのように見つけたらよいでしょうか。これは運送の前後工程だけではなく、その会社のサプライチェーン全体を俯瞰してみると見えてきます。
3. 補修部品管理を受注する
サプライチェーン全体を見渡すといろいろな仕事が見えてきます。サプライチェーンの入口は調達業務です。この調達業務を物流事業者が行ってもよいのです。顧客の調達業務を請け負ってみてはいかがでしょうか。発注業務や在庫管理業務を請け負います。もちろん在庫を多く持ちすぎたり逆に納入が間に合わなかったりさせてはだめです。このようなマネジメント業務は確実に高価格で受注することができます。積極的に受注するようにしましょう。作業はできてもマネジメント業務は苦手だという会社がほとんどだからです。ですから差別化が可能となるわけです。結果的に他社より有利な業務を請け負うことにつながるのです。荷主会社と話をしていれば何をして欲しいかはわかるはずです。当然のことながら話をしなければわかりません。
発注管理や在庫管理などは顧客サイドとしてアウトソースしてもよいと考えている...
仕事の一つです。顧客のニーズに応えてこそ喜ばれるわけですから、ぜひ受注していきましょう。さらにメーカー設備の補修部品管理も大いにアウトソースとして喜ばれる業務であることに間違いありません。なぜならメーカーでは設備の補修部品を在庫ストックし、その数量を適正化については本業ではないと考えているからです。
一方で物流を本業としている会社ではこのような業務は得意中の得意といえるのではないでしょうか。今保有しているノウハウでできる仕事だといえそうです。皆さんの会社が物流事業者だとしましょう。そしてもし物流倉庫をどこかの工業団地の近くに持っていたとしたらどうでしょう。だとすると多くの会社の設備補修部品管理業務を一手に引き受けることができるかもしれません。なぜなら会社が違ったとしても使用している設備は同じものがたくさん存在するからです。ぜひこの業務は受注するようにしたいものです。あまり手を付けている会社は多くありませんので、きっと他社との差別化になるはずです。
いかがでしょうか。喜ばれる物流サービスはいたるところにたくさん転がっています。これを見つけるために積極的に顧客と会話をしましょう。そしてより利益率の高い仕事を受注して会社の利益水準を向上させましょう。