人的資源マネジメント:高いパフォーマンスを実現する組織文化(その1)
2018-03-09
職場の一人ひとりがやりがいを持ち、イキイキと充実した状態で仕事ができること、そして、そういう職場環境を通じて組織が最高のパフォーマンスを発揮できることを実現するための学問であり実践的な方法論であるポジティブ組織開発の具体的な内容を解説します。
前回から、ロバート・クイン「Lift : The Fundamental State of Leadership」を参考に、ポジティブ組織開発を紹介しています。ポジティブ組織開発とは、職場の一人ひとりがやりがいを持ち、イキイキと充実した状態で仕事ができること、そして、そういう職場環境を通じて組織が最高のパフォーマンスを発揮できることを実現するための学問であり実践的な方法論です。今回から具体的な内容を紹介していきます。
組織文化は多様で類型化するのが難しいといわれていますが、まずは、ロバート・クインらが開発した、ビジネスを有効に進める組織の在り方を整理、分析し、様々な活用実績がある Competing Values Framework (CVF) を紹介したいと思います。
CVF の縦軸は、柔軟性を指向する組織構造(Flexible Structures)なのか、安定性を指向する構造なのか(Stable Structures)という分類です。柔軟性を指向するというのは扱う製品群や組織形態が常に変化するような組織であり、安定性を指向するというのは予測や計画などの管理を重視する組織です。
横軸は、組織内部に焦点を置く組織なのか、組織外部に焦点を置く組織なのかという分類です。組織内部に焦点を置くというのは団結や統合を重視する組織であり、組織外部に焦点を置くというのは競合との競争や差別化を重視する組織です。この二軸により組織文化は4つに分類されます。それぞれ次のような特徴を持ちます。
利益、目標、効率などの度合いを基準にして、生産性や競争優位性がどのような状態なのかで組織が有効に機能しているかどうかを判断する組織です。組織内部の管理を重視した上で、常に他の組織との相対的な位置づけや関係を明確にして高い収益性や目標達成のための競争優位性を確保するというマーケット文化ということができます。
意欲、品質、教育などの度合いを基準にして、協調性や組織開発がどのような状態なのかで組織が有効に機能しているかどうかを判断する組織です。社員全員が同じ価値観や目標を共有し、一体となっている家族文化ということができます。
情報利用、安定性、管理レベルなど度合いを基準にして、信頼性や説明責任がどのような状態なのかで組織が有効に機能しているかどうかを判断する組織です。規則や方針によって問題を起こすことなくスムーズに仕事が進むことを重視する官僚文化ということができます。
適応、成長、活用などの度合いを基準にして、適応力や革新性がどのような状態なのかで組織が有効に機能しているかどうかを判断する組織です。組織は未来に備えるための新商品や新サービスの開発を重視し、起業家精神や創造性を刺激するイノベーション文化ということができます。
組織のパフォーマンス向上のためには、現場の組織文化が、経営者や組織トップが想定しているビジネスに適した組織文化と一致していることが大切です。そのためには実際の組織文化を把握する必要がありますが、OCAI (Organizational Cuture Assessment Instrument) というツールを使うことで、...
実際の組織が前述の4つの組織文化のどれにあたるのかがわかります。
図173 組織文化の測定ツール
OCAI は (1) 組織の特徴 (2) リーダーシップの在り方 (3) 従業員に対するマネジメント・スタイル (4) 組織を結びつけているもの (5) 重視している価値観 (6) 達成や成功の基準 という6つの項目について、それぞれ4つの答えが用意されています。この4つの答えの優先順位を答えるというものです。組織を構成するメンバーに回答してもらい集計することで、現在の組織文化を把握することができます。
次回もこのテーマを続けます。