前回の02 分離原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. 局所性質原理の概要
局所的に材質や機能を変えて性能を向上させる考え方です。例えば、全館冷房ではなく、使っている個別の部屋のみ冷房し、エネルギー消費を低減させます。
図1.03 局所性質原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.物体、システム、外部環境等を均質なものから異質なものに変える考え方
自転車用グリップの握り面積を増やすことで、衝撃などの負荷を分散し、グリップにあたる手首の角度を適正に保ち、手の疲れを防ぎます。
図2.人間工学を駆使した自転車用グリップ
b.物体やシステムの各部分を局所的に最適化された状態にする考え方
冷蔵庫は、冷蔵室、冷凍室、野菜室、製氷室など、局所的な目的に沿った条件で最適化管理されています。
図3. 冷蔵庫の構成
c.物体やシステムの各部分が、それぞれ異なる機能を実行できる考え方
金槌は、釘をたたく機能と釘を抜く機能を持っています。
図4. 釘抜機能の付いた金槌
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・表面処理やコーティング
・ソフトウェア開発のための共用開発システム機器
・顧客層を絞ったニッチ戦略やターゲットマーケティング
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくことです。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想することです。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。
例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
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