前回の18 機械的振動原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. 周期的作用原理の概要
一定の動きを周期的に行ったり、周期の強さや程度を変えたりする考え方です。例えば、ウォーキングでは、一定のリズム(周期)で歩くのでは楽しくないため、速足で歩いたり、ゆっくり歩いたり、スキップしたりします。
図1 19周期的作用原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.連続的作用を周期的またはパルス的作用に置替える考え方
温水洗浄便座は、リズミカルな水流を発生させます。少量の水で済む効果もあり、節水も可能となっています。
図2 温水洗浄便座の脈動水流(参考文献:TOTO株式会社 HP)
b.周期的動作の周期の程度や頻度を変える考え方
マッサージ器の揉み球の動作は、使う人の好みに合わせて、周期的動作を設定できます。
図3 マッサージ器の構造(参考文献:大東電機工業株式会社 HP)
c.動作間の一時停止を利用して、別の動作を実行する
時分割多重化(TDM :Time Division Multiplexing)は、複数の異なるデジタル信号を時間的に配列して、一つの伝送路で伝送を行うことが出来るようにします。いっぽう、周波数分割多重化(FDM:Frequency Division Multiplexing)は、それぞれのチャネルごとに割り当てる方法で、アナログ信号で使われています。
図4 時分割多重化と周波数分割多重化(参考文献:PC online HP)
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・脈動水流を利用したウォータージェットバス
・ウィルススキャンプログラムの動作設定
・ルートセールス
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
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