前回の21 高速実行原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. 災い転じて福となす原理の概要
有害な作用も扱い方によって有益なものに変えられる、毒をもって毒を制する考え方です。例えば、予防接種に毒であるワクチンを用いたり、心臓病の薬としてニトログリセリンを用いたりします。
図1 22災い転じて福となす原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.有害な環境を変換し、有用な効果を得る考え方
強風は、一般的には有害とされるが、風力発電には有益となります。
図2 風力発電
b.有害な影響を中和あるいは除去するために、別な物体あるいは動作を加える考え方
防振材は、振動・騒音を防ぎたいモノと振動・騒音源の間に入れて、振動・騒音を軽減します。
図3 防振対策
c.有害な要因を有害でなくなるまで増大させる考え方
サイバーナイフは、正常細胞を傷つけず、癌細胞等を狙い打ちできます。ロボットアームの先に取りつけられた放射線治療装置が体の周りを自由自在に動き、ピンポイントで照射できます。
図4 サイバーナイフ(参考文献:国立がんセンター HP)
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・コージェネーション(廃熱を利用して発電)
・プログラムのバグ出しテスト
・弱い接着力のポストイット
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
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