前回の08 つりあい原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. 先取り反作用原理の概要
問題が発生する前に、事前に問題の芽を摘んでおく考え方です。例えば、鋼板の曲げ加工を行う場合、スプリングバック現象が発生して若干戻ります。その対応策として、予め強めの力で反対応力を与えておき、寸法を調整します。
図1 09 先取り反作用原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.予め反対の作用を施し、有害な効果を減らす考え方
麦踏みは、茎葉の成長は一時止まるが、その分根の発育が良くなり、霜の害に対して強くなります。
図2 麦踏み
b. 物体に反対応力を予め与え、有害応力と相殺させる考え方
縫製/洗い加工後の縮みを少なくするために、予めデニムなどの生地(布地)を縮ませておきます。
図3 防縮加工(サンフォライズ加工)が施されたジーンズ
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・鋳物の内部歪みを減らすための枯らし工程
・ソフトウェア設計のバグ出し
・抗菌加工を施した靴下
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
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