前回の15 ダイナミック性原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. アバウト原理の概要
最初から100%を狙うのではなく、70%、80%というようにアバウトに考えるとうまくいくという考え方です。例えば、全く新しい製品を世の中に発表するとき、どう使うのかなど提案しながら開発をしていくテストマーケティングもこの例になります。
図1. 16アバウト原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.正確に行うことが困難な場合、「やや少なく」または「やや多く」と問題解決の程度を仮決めしておいて、その問題を解決する考え方
(1)部品の組立作業で、軸を挿入または挿入される部品にテーパ(面取)を付けておくと、アバウトな位置決めで、簡単に軸の挿入が可能となります。例えば、プリント回路基板の部品の足の挿入部も面取がなされています。
図2. 軸の挿入部の面取り加工
(2)飛行機のボーディング・ブリッジは、各々の機種の乗降口の位置にあわせて伸縮・旋回・昇降できる構造になっています。機体に接する末端は蛇腹になっていて、機体の形状にあわせて密着します。飛行機の大きさに合わせて、仮決めしながら位置合わせをします。
図3. 飛行機のボーディング・ブリッジ
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・機械加工で粗削り加工後の仕上げ加工
・あいまい検索
・発生頻度の高い順に問題解決
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
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