前回の03 局所性質原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. 非対称原理の概要
非対称にデザインすることによって、美しさや作業を楽にしたり、フールプルーフ(バカヨケ)設計にしたりする考え方です。例えば、PC等の情報機器のコネクターは、破損防止や安全性のために、逆挿入防止設計となっています。
図1 04 非対称原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.物体やシステムの対称形状を非対称にする考え方
鍵は、物や構造物に取り付けられる開閉を制限するために非対称としています。
図2 鍵の形状
b.外部の非対称に合わせるように物体やシステムの形を変える。
缶コーヒーや缶ビールの飲み口が左右対称だと、開ける力が分散して強い力が必要となります。そこで、開ける部分にかかる力を一点に集中させて、梃子の原理も適用し、小さな力でも開けられるように、飲み口の穴を非対称(ラグビーボールのような)形状としています。
図3 缶ビールの飲み口の形状
c.非対称の程度を増加させる考え方
コネクターは、正確な組立を保証したり、フールプルーフ(バカヨケ)設計としたりするために、複雑な形やピン配置にします。
図4 PCのコネクター端子形状
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・複数の異なる測定目盛りをもたせた定規
・システムテストの例外処理テスト
・右利き、左利き用のグローブ
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
...