前回の20 連続性原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. 高速実行原理の概要
高速にものごとを処理することで、有害作用が出る前に終わらせてしまおうという考え方です。物理的矛盾の解決策の「時間で分離する」も含まれると考えてよいでしょう。例えば、パンやおにぎり等やわらかい食品は、ゆっくり切断すると変形するが、高速で切断すれば、変形せずきれいに切断できます。
図1 21高速実行原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.非常に高速で動作を実行し、有害な副作用を除去する考え方
(1)レーザーマーキングは、対象物にレーザー光を照射して表面を溶かす、焦がす、剥離する、変色さ
せる等で商品名、シリアル番号等を印字する方法です。高速で処理するため、対象物に熱変形や損
傷を与えません。
図2 レーザーマーキング(スキャン方式)
(2)超音波ナイフは、刀身が超音波を発生させる超音波振動子となり、高速に振動することによって普
通にナイフを使用する以上の切れ味を引き出す。チョコレート、ケーキなどに利用されます。
図3 超音波ナイフ
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・アルミなどを一発で最終形状に成形するインパクト成形
・画像圧縮技術
・オンライン商品管理システム
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
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