前回の14 曲面原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. ダイナミック性原理の概要
物やシステムの形状、プロセス、特性などを動かしやすいようにする考え方です。例えば、ツィストバルーン(細長い風船)は、自由に形状を変えられます。また、ロボットを多関節にすれば自由度を増やせます。
図1. 15ダイナミック性原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.物体やシステムの特性、プロセスなどを変更して、最適の動作条件を見つける考え方
自動車のハンドルの高さは、運転者に最適な状態にあわせることができます。
図2. 自動車のハンドル
b.物体やシステムを分割して相対的に運動可能にする考え方
マジックハンドは、多関節構造になっており、掴みたい位置に合わせて柔軟に伸縮できます。
図3. マジックハンド(参考文献:バンダイ株式会社 HP)
c. 物体やシステムの可動性や適応性を増す考え方
折り曲げられるディスプレイは、畳むことができて小型化には効果的です。
図4. 折り曲げられるディスプレイ(参考文献:サムスン HP)
d. 自由運動の量を増加させる考え方
多関節ロボットの軸数を増やすと、より自由度が高くなります。
図5. 多関節ロボットのメカニズム
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・形状記憶合金/形態安定繊維(シャツ)
・障害対応のデュプレックスシステム
・折りたたみ傘
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
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