『価値づくり』の研究開発マネジメント (その5)
2016-06-24
前回は、「自社の市場と技術を目いっぱい広げ活動する」の中の「市場」について議論しました。今回は「技術を目いっぱい拡大」に関する活動を議論したいと思います。
企業において自社の強み技術を明確にしたいというニーズはかなり強く、多くの企業はなんらかの形で自社の強みの技術を抽出しているということをやっています。しかし、ただ強い技術を明らかしたところで、終わっている企業は多いものです。自社の強み技術を設定する意義は、次の2つを行うことです。
(1)その強い技術を「継続的」に使って、事業を強くし、また新事業を創出する。
(2)その技術を「継続的」に強化する。
残念ながら現実には、自社の強み抽出の結果をうまく活用できている企業は少ないものです。私は、企業において自社の強みの結果をうまく活用できない理由には、大きくは2つあるのではと考えています。
まず1つ目に、その技術の強みがあまりに狭く定義されているために、事業の強化や新事業創出の機会が限定されてしまうことです。2つ目は、自社に長期的な視点から技術を活用し、同時に技術を強化していくという姿勢が不在であることです。
この問題を解決するために、自社の強い技術はある程度の領域を持つように広く定義するのが適当です。ここでは、その広く定義した技術をコア技術と呼びます。そして、そのコア技術を長期的な視点から活用・強化していく姿勢を持つことです。実はこれら2つにより、コア技術は企業の長期的な技術戦略の要となるものです。
このようにコア技術は、企業の長期的な成長を支える屋台骨です。しかし現実の建物の屋台骨と異なるのは、企業は成長していかなければならないという点です。建物でたとえると、建物自体が年々上に伸びる(階が増える)、また低階層部分も横に大きくなるということです。
そのためには、構造体を支える柱も継続的により太くしなければなりませんし、新たな追加的な柱も用意しなければなりません。また、柱同志を補強材で連結し、強化していくことも必要です。
更に、虫が食った柱や役割を終えた柱は、除去しなければなりません。ちなみに、壁材や床材は他社からのオープン・イノベーションで獲得しても構いません。なぜなら、それらの部材は企業の長期的成長を支えるものではないからです。
以上より、コア技術は企業の成長にとって極めて重要で、適正にマネジメントしていくべきものとして、ご理解いただけたのではないかと思います。コア技術のマネジメントの視点は、継続的に以下のことを行うことになります。
(1)既存のコア技術...
一つ一つの強化 <既存の柱の強化>
(2)新たなコア技術の追加 <新しい柱の追加>
(3)コア技術同士のクロス・ポリネート(異花受粉) <既存の柱同志の連結>
(4)古くなったコア技術の除去 <腐った柱、役割を終えた柱の除去>
今回のテーマは、そもそもは、イノベーションを継続的に起こすために「技術を目いっぱい広げ活動する」ということですので、(1)~(3)の項目がそのための活動ということになります。