前回の17 他次元移行原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
1. 機械的振動原理の概要
主に、機械的振動や超音波などの振動を利用する考え方です。また、その振動を強くしたり、他の振動と共鳴させたりして課題解決を図ります。
図1. 18機械的振動原理のイメージ図
2. サブ原理の種類と図解事例
a.物を発振あるいは振動させる考え方
ハンマー・ドリルは、コンクリートなどに穴を開けるために、前後の衝撃を加えつつドリルを回転させます。
図2. ハンマー・ドリル(参考異文献:日立工機HP)
b.振動数を超音波レベルまで増大させる考え方
超音波洗浄機は、隅々まで汚れを取り除くため、超音波の振動数で、眼鏡、時計の洗浄を行います。
図3. 眼鏡用超音波洗浄機
c.物体またはシステムの共振周波数を利用する考え方
バスレフ方式のスピーカーは、後面から出る共振周波数付近の音をポートに共振させ、その音をスピーカーの音と共に出して、より豊かな低音が再生できるようにしています。
図4. 共振周波数を利用したスピーカー
d.圧電振動子を使用する考え方
クオーツ時計は、ICチップに内蔵した水晶)発振器からの周波数を基準にして、時計を正確に駆動します。
図5. クオーツ時計の構造
e. 超音波と電磁波を組み合せて使用する考え方
高周波誘導加熱は、電磁誘導の渦電流によって発生するジュール熱で金属を加熱または融解する方式です。ろう付、溶解、焼入れ、焼鈍などに活用します。高融点金属の溶解、酸素不要、真空中の溶解に使える等のメリットがあります。
図6. 高周波誘導加熱炉
3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例
・楽器
・プログラムの負荷テスト
・小型モータ内蔵でリラックス効果を持たせたボールペン
4. 40の発明原理の主な活用法
a.慣習的に使われている方法
問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法
矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
参考文献
1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
◆関連解説『TRIZとは』
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