プロジェクト管理:プロジェクトを可視化する重要性(その10)
2016-10-13
最終的に予実差が小さいとは、予定と実績とをグラフ化してみて、二つのグラフで囲まれる面積が小さいということです。進ちょく管理のスキルはこの面積の大きさで評価します。進ちょく管理のスキル進ちょく管理のスキルにはさまざまな要素が含まれますが、見積もりの質も含めて予実差の規模で評価するのが分かりやすいでしょう。この予実差を小さくできる開発組織では計画が信頼できるため、製造や営業などの他部門との交渉や調整を優位に進められ、開発マネジメントの好循環を生んでいます。
これまでも何度か役割分担の重要性を解説しました。プロジェクトを可視化してコントロールできる仕組みを作ったとしても、開発プロジェクトの中で個人の役割定義が明らかになっていないと、自立的に問題解決のためのアクションが取れないからです。ここでは、役割に応じた個人の振る舞いに注目したメトリクスの活用方法として、アクティビティー・プロファイルを紹介します。
右記の図5は、あるPLを対象に半年の工数を集計し、アクティビティーごとにかけている工数の割合をグラフ化した例です。PLなどの役割ごとに担当すべきアクティビティーが明確になっていれば、担当作業と本来担当すべきではない作業とが識別できます。開発プロジェクトでは日々の問題を解決することや開発作業そのものに忙しく、マネジャーなどの第三者はもちろん、自分自身でもどのような時間の使い方をしたのかは分からないことが多いようです。同じPLという役割でも時間の使い方には大きな差があることが分かります。ここでも重要なのは、基準(予定)と実績の差に注目し、次のアクションにつなげることです。そのほかにも、前述のマトリクス組織において、プロジェクト軸と技術要素軸の交点に属するリーダーのアクティビティー・プロファイルを並べてみても新たな知見が得られるでしょう。
リーダーによって、業務がプロジェクト管理中心なのか、設計・製作・評価中心なのか、バラついていることが分かるはずです。役割/アクティビティーを定義するのが一番難しく、一番トレーニングを必要としているのはこのクラスです。業務定義とトレーニングにより、このようなバラつきを減らす必要があります。重要なミクロの改善開発プロセスの構築や改善は個人レベルの行動を変えることなしに効果に結びつけることは難しいでしょう。そのため、個人の行動に注目したのがアクティビティー・プロファイルです。
最後に、開発プロセス改善の考え方について解説します。採用する方法論や技法はISO9000などさまざまですが、開発プロセスの構築や改善は開発業務に対してマクロ的な視点で行うことがほとんどです。組織間、あるいは、グループ間の仕事の流れとインタフェースを決め、さらに、組織(グループ)内のアウトプットや作業完了条件などを定義することが主です。
この場合、対象としているのは組織レベルの業務です。これをマクロプロセスの改善活動と呼んでいます。必要なことには間違いないのですが、実際に開発効率向上などの成果を上げるのが難しいのも現実です。図6に示すように、組織やその業務という形のないものを改善対象としているため、実施責任がどこに(誰に)あるのかが希薄で、業務規定などの文書が主な成果となってしまうことが多いようです。
開発に対して本当の成果を出すには、別の視点でプロセス改善を実施する...
必要があります。これをミクロプロセスの視点でのプロセス改善と呼びます。ミクロプロセスは、技術者の実際の行動に注目してその行動を変えることが狙いであり、活動対象、そして活動主体は技術者個人です。開発者個人の行動を変えることで、開発効率向上などの実のある成果を上げます。アクティビティー・プロファイルのように、メトリクスはミクロプロセスを改善するためのツールの一つになります。