2018年4月10日に掲載された記事のテーマは「
『お客様のことを考えて文書を書く』とは」でした。この記事の冒頭で、
「わかりやすい文書を書くうえで最も重要なことは、『書き手と読み手の違いを認識したうえで、読み手の立場に立って文書を書くこと』です」と書きました。
今回の記事は、「読み手の立場に立つ」という考え方を「相手の立場に立って考える」という切り口に変えた内容です。
1. 相手の立場に立って技術提案書を書く
高い技術力が要求される建設関連の調査や設計の業務を国や地方自治体などから受注する場合、国や地方自治体などがその業務の受注を希望する会社に業務に関する技術提案書を提出させることがあります。
以前、建設コンサルタント 注)の会社に勤務する方(Cさんとします)とこの技術提案書の書き方について話をしたことがあります。
注):建設コンサルタントとは、社会資本の計画・設計などを行う技術者および技術者の集団(企業)のことです。社会資本とは、例えば、道路、鉄道、橋梁、トンネル、河川、上下水道などのインフラです。
「森谷さん、技術提案書を書く場合のポイントの1つは、業務の発注者の考えを読み取ることです。発注者も技術に関して困っているので我々(建設コンサルタント)に技術提案書を提出させるのです。だから、『発注者が何に困っているのか』、すなわち、『発注者が技術提案書をなぜ提出させるのか』を読み取ることが技術提案書を書く場合には重要です。発注者の考えを読み誤ると技術提案書は採用されない(業務は受注できない)と思います」
Cさんが言いたかったことは、「業務の発注者の立場(相手の立場)に立って技術提案の内容を考えることが重要」ということだと思います。「発注者は何に困っているのだろう?」、「発注者は我々に何を望んでいるのだろう?」などと考えると提案すべきことが見えてくるのだと思います。
Cさんとこの話をした頃、Cさんが書く技術提案書が採用される(すなわち、業務が受注できる)確立は高かったそうです。そのため、技術提案書の書き方に関するCさんの話には説得力がありました。
2. 相手の立場に立ってウェブサイトを作成する
弊社では、弊社のウェブサイトの作成およびその管理をウェブサイト作成会社に依頼しています。この会社での弊社の担当はDさんという女性の方です。
弊社のウェブサイトを2016年2月にリニューアルしました。リニューアルにあたっては、ウェブサイトを作成するための原稿を弊社で作成しそれをDさんに渡しました。Dさんはその原稿に基づきウェブサイトの構成を考えるとともに具体的なページを作成しました。
リニューアルしたウェブサイトを見ると、Dさんは、原稿の中での重要な箇所が目立つように各ページを作成していることがわかりました。しかし、弊社からDさんに、「ここが重要なので、ここが目立つようにしてください」などという指示を出していません。Dさんが、「原稿の中での重要な内容は何か?」と考えてページを作成していました。また、弊社が重要だと考えた箇所とDさんが重要だと考えた箇所はほぼ一致していました。
ウェブサイトのリニューアル後も、ページの修正や新規ページの追加はDさんに依頼しています。この場合にも原稿をDさんに渡していますが、Dさんが、「原稿の中での重要な内容は何か?」と考えて修正ページや追加ページを作成しています。
Dさんに、「原稿の中での重要な内容がなぜわかるのですか?」などと質問したことはありません。そのため、これは想像ですが、Dさんは、弊社の立場(相手の立場)に立って、「原稿の中で重要なことは何...
か?」と考えているのだと思います。
3. 相手の立場に立って考える
「発注者の立場に立って考えること・弊社の立場に立って考えること」で、採用される技術提案書や弊社の考えを反映したウェブサイトが作成できます。これらの例からわかるように、相手の立場に立って考えると見えてくることがあります。
これまでに掲載された記事の中で何度も書いていますが、読み手の立場に立って文書を書くことでわかりやすい文書を書くことができます。読み手(相手)の立場に立って考えることで、「文の羅列で書くとわかりにくいので表を使って書こう」、「『大幅なコストダウンができた』ではわかりにくので『30%のコストダウンができた』と具体的な内容の文を書こう」・・・などいうことが見えてきます。
仕事をするうえで、「『読み手・お客様・相手』の立場に立つこと」は重要なキーワードです。