普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その26)
2018-04-13
前回はKETICモデルの中の知識(Knowledge)の内、ここまで2回にわたりコア技術について解説していましたが、肝心のコア技術とは何か?それをどう設定するのか?について解説をしてきませんでしたので、今回触れておきたいと思います。
実は、コア技術の定義に一般共通的なものはありません。しかし、ここでは、それを『現在から将来にわたって自社の経営資源の柱として、収益に大きく貢献する技術』としたいと思います。
ここでのポイントが、「将来にわたって」です。現在だけでなく、未来志向で将来にわたって大きな収益を創出する技術として定義することが重要です。
それでは、なぜコア技術を設定する必要があるのでしょうか?それは、技術開発には大きな投資が必要であり、企業経営においては常にROI(Return on Investment)、すなわち投資効率を考えなければならないからです。
現実には、自社が製品やサービスを実現し提供するには、原材料やその採掘まで遡れば、極めて広い分野の技術が必要です。しかし、それら技術の開発を全て自社で行うことは得策ではありません。自社はできるだけ絞られたある領域の技術に特化し、そこに経営資源を集中的に投入し、他の技術は他社の技術を利用する必要があります。それにより、ROIを最大化するのです。その自社の対象領域の技術が、コア技術なのです。
それではROIを最大化する技術とはどのような技術でしょうか?その選定軸は以下の3つの要件になります。
まず1つ目が、その技術が最終的に創出し、顧客提供する価値が大きいことです。顧客提供価値、すなわち顧客の視点から見れば、顧客が享受する価値が大きければ、それだけ顧客は大きな対価を払ってくれます。すなわち収益が拡大するのです。
いくらその技術の顧客提供価値が大きくても、競合他社が同様の顧客価値を実現できるのであれば、早晩競争になり、顧客はその享受する価値に見合った対価を払ってくれなくなります。つまり、競争環境下では競合企業は自社の製品を売りたいがために、顧客が得る価値以下で製品を売ろうとするからです。
すなわち顧客は100円出しても良いと思っていても、競合企業が売上をあげたいがために80円で売りますと言い始めるということです。競合企業が多数いると、オファー価格はどんどん下がります。ミクロ経済学の理論では、それは変動費まで下がることになっています。
そこで他社が真似のできない自社の独自性がなければなりません。ここで言う独自性とは、他社がその技術を持たず、もし...
くは水準が低く、また模倣が困難である技術です。
ROIの最大化のためには、1つの製品分野で、顧客提供価値が大きいだけでは不十分です。1つの製品分野のみならならず、複数の、できれば多数の製品分野に適用できれば、ROIのReturnの部分が増えますので、ROIはより拡大することになります。
このように、そのコア技術の適用領域が広いことが、重要な要件となります。