第3章 連関図法の使い方
3.1 連関図法について
3.1.1 はじめに
いよいよ「混沌解明」にふさわしいN7の使い方の説明に入りますが、その最初である本章では、第1章で定義づけした“混沌A”、すなわち“現行システム運営上の問題によって発生する混沌”の解明にふさわしい「連関図法」の使い方を説明します。ところで、N7は、“新”と付いてはいますが、それぞれオリジナル手法が存在し、N7のざん新さは、既存手法の用途開発の妙にあり、ソフトウエアのT T (テクニカル・トランスファー) といえることは、序論で説明しました。
そういったN7の中にあって手法そのもの、すなわち、その使い方においてオリジナル性の高いのがこの 「連関図法」 です。また、その使い方の原形が、製造現場の問題解決を通じて開発されたこともあって、非常に使いやすく幅広く活用されています。しかし、連関図法をスタッフワークに活用しようとしたとき、同じ言語データを扱う「親和図法(オリジナルはKJ法)」に比べ解析結果に説得力が欠ける面があり、活用対象のレベルに限界を感じたというのが、連関図法を知った当初の印象でした。
したがって、連関図法をスタッフワークに適用するときは、常にその点に関する研究姿勢をもって取り組んできましたが、その結果、筆者なりに手に入れることができた結論をこの場を通じてお伝えします。その内容は、第2節、第3節における使い方の説明の中で詳述しますが、本節ではそれに先だって、連関図法のコンセプトとスタッフワークに適用する際のガイドラインについて取りまとめ説明します。
3.1.2 連関図法とは
まず最初に、「連関図法」の定義をN7提唱の書「管理者・スタッフの新QC七つ道具」(P.69~70)から下記に紹介します。
「連関図法とは、原因-結果、目的-手段などの関係が複雑に絡み合っている問題について、これに関係すると考えられるすべての要因を抽出し、自由な言葉で、しかも簡明に要因を表現し、それらの因果関係を矢印で論理的に関連づけ(連関図)。全貌をとらえ、さらに重点項目を絞りこむことによって問題解決をはかる手法」いろいろなタイプやり方を包含する、非常に柔軟性に富んだ手法で、N7の中では最も活用度の高い手法の一つです。
3.1.3 連関図法のオリジナル手法について
序論において、N7を使いこなすためのポイントとして「よってきたるべきオリジナル手法に対する十分な理解」を2番目にあげました。しかし、連関図法のオリジナル手法の場合は、手法開発の“きっかけ”の意義が大きく、手法のコンセプトとしては、新規開発に近いといえます。それゆえ、オリジナル手法に対する理解が、連関図法活用に大きく寄与することは期待できないので、オリジナル手法の説明に加え、オリジナル手法からN7の「連関図法」への発展過程を併せて説明することにしました。
(1) オリジナルは「管理指標間の連関分析」
オリジナルは「品質管理のための経済計算」(千住鎮雄・水野紀一著:日科技連出版)の「管理指標間の連関分析」における、問題の原因に関わるファクター相互の因果関係を図示したものであり、それを再現したものが、図. 3-1です。
図. 3-1 連関図法のオリジナルとなった図の再現
実は、この「指標間の連関分析」にも、経済学における「産業連関分析」というオリジナルが存在しますが、それはあくまで連関分析に関わるものであり、N7の連関図法に対するオリジナル性はないのです。
(2) オリジナルからの「連関図法」開発の背景
N7研において、連関図法提唱者である倉林幹彦氏(注1) から受けた説明を、筆者なりにまとめると次の通りです。
(注1) 三菱電気㈱勤務、QC手法開発部会員、N7指導講師「“管理指標間の連関分析”は、複雑に絡む指標相互の関係を矢印で因果関係づける“連関図法”と、調査や観察で数値化した指標間の関係を分析し各指標の変動が最終目標値に与える影響度を数量的に把握する“連関分析”の2つからなるが、“電動機巻線工程の遅れ改善”といった具体的なテーマに活用してみると、連関図が完成した時点で問題はほとんど解決してしまう。これは、摘出要因が“指標”というより“原因”に類するものが多く、関係者が連関図作成段階で問題の本質を把握し逐次手を打つからです。
一方、“連関分析”の方は、要因相互の関係を数値化するのが非常に大変で、中には数値化できないものもあります。以上の経験から、解析対象を、数値化できる“指標”に限定せず、広く“言語データ”とし、連関図法の充実を図ることにより、原因が複雑に絡む諸問題の解決に幅広く適用できるのではないかと考え、“連関図法”を独立させてN7の一つとしました」(文責:筆者)
上述の通り、手法に対する着眼点において、非常にオリジナル性の高い手法といえます。ただ、このような経緯の背景には、N7開発母体で...
ある「QC手法開発部会」の勉強会に講師として招かれたオリジナルの著者である千住鎮雄氏(故人)のご指導が大きく寄与したと聞き及んでいます。それにしても、このごく限られた適用経験の中から、既に今日の幅広い活用を見通しておられる点、N7提唱の方々の慧眼に改めて敬意を表する次第です。
次回は、第3章の3.1.4 使用対象についてから解説を続けます。
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)
(その5)
(その6)
(その7)
(その8)
(その9)
(その10)
(その11)
(その12)
(その13)
(その14)