自社のコア技術の発信 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その31)

 今回も前回に引き続き、「その1:自社のコア技術の補完技術」を探す方法としての自社のコア技術の発信について、解説をしたいと思います。
◆関連解説『技術マネジメントとは』
 
  
 

1. 自社のコア技術に通じていない多様なパートナー候補にどう情報を発信するか

 
 自社のコア技術を外部に発信する場合、最も効率的なのは、自社のウェブサイトに自社のコア技術に関する情報を掲載することです。しかし、ここでの注意点が、前回解説したように、今後オープンイノベーションに結び付きそうな外部のパートナー候補は多様であり、自社の技術に通じていない可能性が大きいのです。
 
 そこで、自社の技術に通じていない多様な人達に、いかに効果的に自社のコア技術を紹介するかが重要となります。
 

2. 自社のコア技術の『機能』への展開

 
 私が30年前に入社した外資系のコンサルティング会社でよく言われたことに、「技術は『機能』で表現する」があります。その当時クライエント企業の技術の棚卸プロジェクトの中でクライエント企業の保有技術を整理する場合には、その技術の『機能』、すなわちその技術で何ができるのか?の表現で技術を記述しなければならないと、先輩のコンサルタントに指示されていました。
 

3. コア技術で実現できる機能は多数ある

 
 しかし、その後認識したことは、一つの技術で実現できるのは一つの『機能』だけではないということです。
 
 例えば、活性炭技術は、フィルタリング機能もあれば、ものをくっつけるという機能もあります。またフィルタリング機能は、更に分解すれば、何かから有用物質を濾しとるという機能もあれば、液体などを浄化するという機能もあります。このように、一つの技術で実現できる『機能』は数多くあります。
 
 多数の多様なオープンイノベーションのパートナーを見つけようとする場合、自社のコア技術で実現できる機能を、できるだけ数多く、そして情報の受け手にとって具体的な内容として発信することで、多くのオープンイノベーションの機会を生むことにつながります。
 
 つまり、技術ではなく、『機能』、すなわち顧客にとっての価値により結び付きやすいような形で発信することが重要なのです。
 

4. 技術を数多くの機能に展開する方法:技術機能展開法

 
 そこで考えたのが「技術機能展開法」です。思考の整理法にMECE(Mutually Exclusive、Collectively Exhaustive-もれなく、だぶりなく)というものがありますが、その構造を利用して一つの技術で実現できる『機能』をできるだけ『網羅的』に沢山発想して整理しようというものです。
 
 MECEは経営コンサルタントになると必ず学ばされる必須の知識であることが示すように、極めて重要かつ有効な思考法です。このMECEの構造で思考できると、一つのアイデアから、他のアイデアを芋蔓式に発想できるようになるのです。
 
 例えば、鉄道会社が電車の乗降客向けの新たなニーズを考える場合、最初に「車内での英会話スクール」というアイデアが思いつけば、「車内」サービスを提供するという切り口で、例えば車内での居酒屋やマッサージなど様々なサービスを発想できます。
 
 また「車内」があれば「車外」もあるわけで、更に「車外」といっても、駅構内、駅へのアクセス時、駅から降...
車した後の目的地までアクセス、など次々と関連する場が発想できます。
 
 最初の一つの思い付きを得ることは、多くの場合難しくはありません。またMECEで発想する場合の重要な注意点として、この時点では発散系で考えるフェーズですので、実現性は全く考慮する必要はありません。
 
 上の発想は、誰しも常に頭の中で大なり小なり行っていることですが、ここでのポイントがMECEすなわち「もれなく、だぶりなく」を徹底し、思考することです。
 
 次回も自社のコア技術の補完技術」を探す方法の解説を続けます。
 

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