◆なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのか
3. 利用者からの紹介で次から次へと新規顧客が来店:株式会社アンジュ
(5) お客様が喜び、その姿を見たスタッフも笑顔になる
アンジュでは、基本的には予約が必要ですが、ヘアカット、ヘアマッサージ、ヘッドスパ、おしゃれウィッグ、フェイシャル、ネイル、フットケア(足のマッサージ)などが同時進行で行なわれるため、余計な時間もかからずに、その施術時間内にできるので予約のメリットは大きいのです。
通常はカット、シャンプーなどの一連の施術で90~120分を要するのですが、さらに上記のメイクオーバー(融合メニュー・同時施術)は、それぞれの単独メニューを別々に行なうと、さらに多くの時間がかかります。ところが、90~120分の中で通常なら多くの時間を要するさまざまな施術が同一時間内で受けられるのです。さらにいうと半個室・個室も備えられていて、心置きなく自分が希望した各種の施術を楽しむことができるようになっています。
顧客はその付加価値に対して喜んでその代価を払い、店の時間効率も上昇するというまさにWin‐Winの顧客とアンジュの良質な関係を構築しているのです。
ところで、理容店に通う多くの男性は「髪を切る時間が惜しい」「床屋の時間はもったいない」と言っていると耳にします。また事実アンケートにそのように記されていることが多いのです。こうした男性がアンジュに行ったらびっくりするでしょう。
アンジュではこのように、すべてが顧客のために創造され、シームレス化しているからこそ、顧客は「糊代」方式でカバーされ、各部門が「オーバーラップ」し、「統合」され、「適合」「融合」により居心地が良いのみならず、幸せ感で一杯になるのです。初めてこの体験を持った顧客は「まるでお姫様」か「お殿様みたいだ」と男女を問わず表現します。
その幸せそうな様子は、働く側をうれしくさせるのです。ES(従業員満足)に連動しているのです。「お客様の幸せイコール白分たちの幸せ感」の実感に包まれるのです。いずれも「メイクオーバー」と称される融合そのものの付加価値=アンジュの高付加価値戦略です。だから「今の幸せ実感を今度はいつ持とう」という意識が、顧客を次回の予約へと導くのです。リピーターが多い証拠です。
ついでですが、アンジュの「新規顧客」は「生まれて初めて美容サロンを体験する人」、あるいは「今まで他店に行っていたが、アンジュにブランド スウィッチする人」...
ですが、これらの新規顧客の90%以上は、すでにアンジュの顧客である人々からの紹介なのです。
そしてまた、それらの顧客がアンジュでの「固定顧客」となる比率が90%以上なのです。「施術を終えて次回の予約をすることが幸せ」「アンジュの店を出るときが幸せ」「人に素敵と誉められて幸せ」というように、幸せを創造するサロン、それこそがアンジュなのです。
次回は、これぞ「浅草流の結束-東京浅草」を、解説します。
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載