:最終回 新QC七つ道具: PDCA-TC法の使い方(その4)
2018-11-06
【目次】
序論 ←掲載済
第5章 マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章 マトリックス図法の使い方
第7章 系統図法の使い方
第8章 アロー・ダイヤグラム法の使い方
第10章 PDCA-TC法の使い方←今回
PDCA-TCの効用を、あらためてまとめると次の通りです。
数冊のファイルができるプロジェクトの経緯を数10cmのPDCA-TCにまとめることができるばかりか、必要ならファイルの中の詳細リポートに導くことができます。
標準シートに従って記入することにより、ステップ1~7における論理の飛躍を防ぎ、判断・結論の欄が、独断と偏見の防止と検出を容易にします。
通常のリポートは、成功体験のみが結論として表面に出ますが、PDCA-TCは、それに至るまでの失敗経験が諸判断とともに表示されるので、同じ失敗をしないで済むのです。
失敗の場合は、比較的記憶による防止が期待できますが、成功へのステップは、記憶に残りにくく、無駄な繰り返しをしやすいのです。こういったことも防ぐことができます。
獲得した技術の内容だけでなく、それに至るプロセスの全貌を、論理的ストーリーとして把握できるので、的確な技術の蓄積とともに中断プロジェクトのスムーズな再開も期待できます。
迅速性より厳密さが求められる開発型の場合、PDPCの持つ厳密性では不十分なきらいがありますが、PDCA-TCがフォローの過程で補うことができます。
筆者の経験をベースにしたセミドキュメンタリーをモデルに、実際の記入例を図10-2に示します。
顧客の製品である機台に搭載される機能部品の“大幅な軽量化”に挑戦したプロジェクトで、重量軽減と二律背反関係にあるA特性の鍵を握る化学製品部品Bの材質選択が最後の課題となり、材質C1の試作品を納入しました。2週間後、顧客から材質C1のテスト結果がOKであったとの連絡が入り、材質C1をベースとした最終確認に入ったところ、1カ月ほどして、別の機台でのテスト結果がNGとなったとの連絡が顧客からありました。その情報を起点とした活動経過のうち、テストコースの違いを工夫で乗り越え再現試験方法を確立するまでをPDCA-TCで示したのが図10-2です。
図10-2 C型PDPCのPDCA-TCによるフォロー事例
この経緯を通常のリポートにまとめて顧客に説明することを想像してもらえば、PDCA-TC法の効用を実感してもらえるのではないでしょうか。
この「PDCA-TC」が、1987年3月に開催された“第9回新QC七つ道具シンポジウム”の基調講演の中で「“新QC七つ道具”は元来道具箱の意味であって、それ以外に新QC七つ道具の考え方の中に入る有用な手法があるなら積極的にこれらを取り入れて活用することが期待される。現在のところ、候補の1つとしては、PDCA-TC(PDCA Tracing Chart...
)が有用として報じられている」(Engineers No.464、P.4:日科技連)と納谷先生に紹介されてから年月が経過しましたが、自分の言葉でこの「PDCA-TC」を紹介するチャンスに恵まれたことは、感無量です。既に、いろいろな局面でこの「PDCA-TC」や「PDCA-PC」を活用してこられた方々にとり、この説明が、さらなる活用度向上につながることを期待します。