「おもてなしの神髄」 CS経営(その69)
2019-01-16
前回の(1)に続いて解説します。
現場の人間がつかむ情報活動を「情報メモ活動」と称し、一人ひとりがメモした情報を皆で整理し、どのように活動に反映すべきか議論します。メモは現在までに約2200枚、年間だいたい180枚のペースです。その内容は、お客様との会話や動作、何気ない一言に関するものが多いのです。
そして、救命講習、認知症サポーター研修の受講を筆頭に、浜松市の見守りネットワーク、浜松市の里親制度による地域清掃への参加(里親制度とは、さまざまな事情により家庭内で通常の生活ができない子供を、知事が認定した里親に預け、里親家庭で温もりのある環境、愛情と共に育てる制度である。とくに子供の教育に理解と熱意と情熱と愛情を持つ里親の取り組みです)、中学校・特別支援学校生徒の職場研修への協力、24時間電話・WEB対応、クリスマスイベント、節分イベント、七タイベント、お月見イベント、旅行、敬老祝い、入園入学祝いほか各種イベントの実施、情報誌、ミニコミ誌、カルチャーサロン、文化講演会の運営など、地域に貢献する活動を枚挙にいとまがないほど実施しています。
さらには、CTI(コンピューターテレフォニー・インテグレーション)、すなわち、お客様から電話があったときにお客様データが画面上にポップアップするシステムを導入することにより、お客様との1対1の関係を大切にし、よりよいご提案とサービス対応を行なうことに努めているのです。
「新聞店が野菜宅配事業」と聞くと驚く方も多いかと思いますが、これもまた地域貢献という意味で特筆すべき活動です。顧客サービスの一環として企画した「朝市」で地元農家と知り合うことで、農家の置かれている厳しい現状を目の当たりにしたことがきっかけとなっています。
「自分たちになにかできないだろうか」という思いから、地元の頑張る農家を応援しようと活動を開始したのです。その名は「FABLE」。農家と家庭のテーブルを結ぶという意味の造語ですが、ファーブルのコンセプトは安全・安心で、なおかつ作り手の顔が見える野菜・果物です。メンバーが実際に農家を訪問し、栽培方法を専門家の目で確認し、新聞配達のルートを活かして配達するのです(現在は通販にまで発展しています)
活動はそれだけにとどまらず、次に取り組んだのが「高齢者向け夕食宅配事業」です。自社だけでは難しいため、商品開発(夕食)と調理は知久屋が担当し、宅配、顧客情報管理システム、顧客対応、コールセンター機能、宣伝などはアウンズーヤナギハラが担当するというコラボレーションによって運営されています。
顧客の生涯価値を大切に活かすことで顧客も喜び、結果として企業も発展するのです。人はある事柄に対して一生の間にどれくらいの投資をするでしょうか。たとえば、一生の間に卵...
を何個食べるでしょうか。野菜ならどうでしょうか。その投資のうちどのくらいを自社の製品、サービスに使っていただけるかが問題です。
市場が縮小する日本において、この発想は欠くことのできない要件となっています。自社が持つ資産を活用し、顧客が喜んでくれるサービスをどれだけ生み出せるかが事業発展の基盤となるからです。
顧客の生活、人生のあらゆる場面で役に立つことができれば、企業と顧客との関係は強固なものとなります。そして、結果として長期的な関係性が生まれるのです。これこそが企業が目指すべき未来ではないでしょうか。
【出典】武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載