◆プロジェクトリーダーの心得:革新と融合、全ては顧客満足のために
2. リーダーは顧客満足、おもてなしの体現者たれ
(1) 組織あるところに争いあり
個性を持った人同上が集まると、対抗意識が生まれ、争いに発展することがあります。それを、ファイト・アンド・スライトというのです。「抗争」「無視・軽視」「犠牲」が生まれることになるのです。では、伸良くすればいいのかといえば、そうでもないのです。気が合う者同士が仲良くなるケースもあります。これをぺアリングといいます。しかし、仲良し同士は派閥を形成します。いくつもの派閥ができると、結局は抗争に発展することになるのです。
また、組織には、自らは何もしないで誰かに寄りかかったり、接近してよりどころとする例も多くみられるので注意が必要です。これはディペンデントと呼ばれる現象です。
(2) 本当の管理とは何か
日本の高度成長時代における「管理」に慣れている年配のビジネスパーソンは、管理といえば「上が下を見る」「チェックする」「ミスを発見する」「欠点を探す」といったように、どちらかといえば「マイナス要素」を見つけることと捉えているようです。「ミスさえ起こさなければ成長できる」「黙っていても右肩上がり」でしょうか。そんな時代を経験したことも影響しているのです。
しかし、現在のような経済状況、時代環境においては、何もしなければ、たちまち、右肩下がりとなってしまいます。そのような時代の「管理」は、「資産の増加を図る」ことを含んだ概念でなければならないのです。つまり、自分が企業から預かり、任されている仕事とスタッフの資質を高めて、企業の資産増加に貢献することが、リーダーには求められているのです。
そして、そのりーダーに必要なのが、この連載で取り上げた「顧客満足」「おもてなし」の思考であり、顧客との良質な関係の創造です。そのためには、メンバーの先導役となり、ともに喜ぶリーダーでなければならないのです。リーダーにとってのチームメンバーは、仲間であり、戦友でもあるからです。
3. 連載の最後に
生産性向上、コストダウン、スピードアップ、ロボット化、ICT、IoTと、産業革命以降、人類を取り巻く環境は急速に変化を続けています。しかし、それらは「顧客志向」とは思えない要素を内包しているように思います。
情報技術、とりわけインターネットは「コストダウン」という点で経済、産業に大きく貢献しましたが、一方で、採算無視の低価格競争を招き、企業を疲弊させました。結果、製品品質が低下し、顧客満足とは相反する「顧客自体を消費することに精を出す企業」「作れば作るほど、売れば売るほど顧客を失う活動に励んでいる宴の河原状態の企業」が増えることとなりました。
そして、今まで主流だった「直接的」な人と人との関係は、「間接的」な文字や画像による交流にとってかわり、事務的、機械的で無機質な関係性へと変化しています。
「無機質な関係性」を顧客が歓迎するわけがないのです。そのことは、私どもの独自のノウハウである「不満足度調査」の結果にも如実に表れています。顧客は「本質的ではないコストダウン」「心の交流を意識しない管理者」「マナーを身につけていないスタッフ」などに迷惑しているのです。
企業にとっての問題も多いようです。「コストを下げ、品質を落としてしまう」「スピードアップを図つて、仕事を雑にする」「効率化によって付加価値を失う」「人間のロボット化により、糊代、作...
り込み、融合、日本流おもてなし文化を喪失」、その結果、顧客も、競争力も同時に失うことになるからです。もちろん、これらは世界共通の現象です。
そして、そこに日本企業にとってのチャンスがあるのです。技術力という点で陰りが見え始めた今、日本の優位性は、「日本流おもてなし」にあります。だからこそ、そこを磨かなければならない。私自身の体験を含め、この連載で紹介した具体的事例は、他国には簡単に真似ができない「日本流おもてなし」が伴ったモノづくり、サービスとなっています。それらが、読者の方々の日々の取り組みに多少なりとも貢献できれば幸いです。
これで、なぜ、あの企業の「顧客満足」はすごいのかの連載を終了します。
【出典】武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載