3つの結論 成熟市場における競争戦略:ランチェスター戦略(その3)

 

1. ランチェスター戦略「3つの結論」について

 
 ランチェスター戦略から導かれる3つの結論について解説します。3つの結論とは次の通りです。① NO1(ナンバーワン)主義、② 足下(そっか)の敵攻撃の原則、③ 一点集中主義
 

① NO1(ナンバーワン)主義

 
 ランチェスター戦略の代名詞と言ってもいい、1丁目1番地の重要な結論です。
 
 ランチェスター戦略では1位を強者といい、2位以下は弱者と呼ぶことは前回までの説明の通りです。1位と言っても2位以下との差が少ない状況では盤石ではありません。2位以下の企業も逆転を目指して激しい競争が繰り広げられます。しかし、2位以下を圧倒的に引き離した1位が相手であれば、2位以下はまともに張り合っていたら企業体力がもちませんので棲み分けを意識するようになり、結果的に1位の収益性が向上します。
 
 2位以下を圧倒的に引き離す状態になることを、ランチェスター戦略では単なる1位ではなく、NO1と称しています。引き離すべき数値はルート3倍(約1.7倍)を基準としますが、その市場に2社しかいない2社間競合や、特定顧客内の単品シェアで比較するような局地戦の場合は3倍とします。
 
 NO1になると様々なメリットがあります。何も大きな単位の市場でなくても構いません。地域、商品、顧客層などを絞って、まずは小さくてもいいのでNO1領域の確立を目指します。すると、その領域で知名度が上がり、徐々に利益性も向上していきます。その利益を、次のNO1領域へ投資して、徐々にNO1分野を拡大させていくことが肝要です。
 
 
 図3.NO1効果
 

② 「足下の敵」攻撃の原則

 
 自社が事業を展開している市場が成長市場であれば、市場の伸びに応じて売上を伸ばすことができます。しかし、売上の伸びが鈍化、あるいは縮小している成熟市場においては、売上・利益を上げるためには同業他社から顧客を奪う以外に方策はありません。顧客を奪うという点ではどの同業者も同じなので、すべてのライバルと全方位で戦っていると、確率戦・消耗戦となって、得るものが少なくなります。 
 
 競合対策すべきは「足下の敵」です。足下とは自社よりも1ランク下の競合です。自社が1位であれば2位、2位であれば3位です。これを「足下の敵」攻撃の原則といい、ランチェスター戦略の二つ目の結論です。ただし、いついかなる場合も足下の敵を叩けばよいということではなく、あくまでも原則です。企業規模や、地域性、競合企業の成長性などを踏まえて検討します。大事なことは、対策すべき競合を絞ることです。
 
 

③ 一点集中主義

 
 いかにしてNO1になるかですが、既に1位の強者は「足下の敵」攻撃の原則で2位を叩きます。弱者はどうするかですが、全体の勝負で強者に挑んでも勝つのは困難です。よって、部分的な勝利を目指します。特定の地域、特定の顧客層、特定の商品など、戦う領域を細分化すれば既に1位の分野があるかもしれません。あるいは、1位ではないが逆転可能な射程圏内に入っている分野があ...
るかもしれません。弱者はそこを狙ってNO1領域を作ります。これをランチェスター戦略の三つ目の結論である「一点集中主義」といいます。
 
 集中すべき分野を決め、その分野に量的経営資源を投入し、局所優位となることを目指します。弱者の戦略を駆使して、「足下の敵」を攻撃し、一点集中で、NO1を目指す。これをランチェスター戦略の三つの結論と呼びます。
 
 
 図4.一点集中主義
 
 次回は市場シェアに応じた戦い方を解説します。
 
◆関連解説『事業戦略とは』

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