ランチェスター戦略は全社の販売戦略を立案する際に使われますが、営業現場において、営業マネージャーが率いる現場単位の戦略を立案する場面でもよく使われます。市場の最前線である営業現場にこそ、市場地位に合った戦略が必要であると、ランチェスター戦略において考えているためです。
地域・商品・顧客層によって、弱者と強者は入れ替わります。大企業であっても強者とは限りませんし、また、中小企業だからと言って必ずしも弱者ではなく、特定商圏では強者ということもあります。同じ会社であっても、営業現場単位でその市場地位に応じて戦略を切り替え、「弱者の戦略」や「強者の戦略」をとる必要があるのです。
ランチェスター戦略は「実務体系」が整備されていることが特徴の一つです。世の中には様々な経営戦略がありますが、ほとんどは理論のみです。それぞれの経営戦略を自分のビジネスや実務に落とし込む作業は、自らで試行錯誤しなければなりません。それに対して、ランチェスター戦略では、「担当地域でいかにしてNO1になるか」「担当顧客をいかに攻略してシェアを上げていくか」など、実績と事例が豊富な四つの実務体系を参考にして、成果を追及することができます。実務体系について簡単に説明します。
1. 地域戦略編
地域戦略は攻略を目指す地域(メーカー・卸の場合はテリトリー、店舗ビジネスの場合は商圏)を細分化・重点化して、シェアNO1の地域を作っていく実務体系で、以下のような特徴があります。
- 市場規模、人口、世帯数など定量的な把握だけでなく、地域の特性(点・線・面、うちもの・そとものなど)を定性的にとらえる独自のノウハウがある。
- 地域における市場地位によって重点化すべき地域の選択基準ノウハウがある。
2. シェアアップ戦略編
シェアアップ戦略は、担当している販売チャネルや顧客において、いかにシェアを上げていくかについての実務体系です。間接販売の場合は代理店や販売店におけるシェアアップで、直販においては担当顧客におけるシェアアップです。特徴は以下の通りです。
- 特定チャネルや特定顧客におけるシェアを把握するやり方のノウハウがある。
- 顧客の需要規模と顧客内シェアから、顧客を「ランチェスター式ABC分析」によって格付けし、シェアアップ目標と戦略を策定するノウハウがある。
3. 営業戦略編
営業マネージャー・営業幹部が営業組織を、あるいは営業マンが自らをいかにマネジメントして、営業成果を追及するための実務体系です。顧客別の営業方針や顧客情報の収集、商談プロセスの最適化など、顧客攻略のための実務に重点を置いています。特徴は以下の通りです。
- 顧客のシェアアップを図るためには情報が重要(情報なくして戦略なし)であり、ターゲット顧客の情報を収集するためのノウハウがある。
- 重点顧客を攻略するための営業プロセス最適化のノウハウがある。
4. 市場参入戦略編
前述した「地域戦略」「シェアアップ戦略」「営業戦略」は既存事業においてシェアを拡大し、NO1分野を確立していくための実務体系であり、基本的に成熟市場を前提としています。しかし事業活動においては、市場の導入期や成長期でとるべき戦略があり、市場の時期別の戦略を体系化したものが「市場参入戦略編」です。特徴は以下の通りです。
- 新規市場開拓、新規事業開拓などの経営レベルの実務ノウハウがある。
- 市場参入時期(先発・後発)によってとるべき戦略についてのノウハウがある。
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◆ 小が大に勝つ原理原則
5回に分けてランチェスター戦略の基本について解説を連載しました。
- ランチェスター戦略は「小が大に勝つ原理原則」です。原理原則なので、知っていようが知っていまいが原則通りになります。よって正しく理解して活用することが成果につながります。
- 経営戦略の...