1. JIT生産と誤解
JIT生産は、今や改善活動の目指すべき完成モデルとなりつつあります。しかし、その認識には、誤解が多く、購買側からの「多頻度小口納入」要求が、「JIT生産」の大義名分の元に実施されることを取り上げ、その弊害を指摘する意見もあります。しかし、単なる「多頻度小口納入」要求は、本当のJIT生産ではありません。
JIT生産の本質は、「多頻度小口納入」にはなく、より内部の取組み「生産の流れ化・平準化」と「現場改善」にこそあります。自動車生産の場合は、組立てラインへの多様な部品生産・供給の大半を下請けが受け持つため、生産の流れ化・平準化を実現しようとすると、下請けからのJIT納入が不可欠であり、これがより際立って見えるだけです。
2. JIT...
では、JIT生産の本質とは何であり、その適用はどうすればよいのでしょうか。
①生命体のような有機的なものづくりの流れ
トヨタ自動車の(2代目)創業者である豊田喜一郎氏は、戦前の1920年代にすでに「有機的なものづくりの流れ」という考え方を主張しています。トヨタ生産方式が形作られたのは、1950~60年代ですが、それから遡ること30年前、量産型の近代工業が唯一の理想とされた時代に、この考え方を述べていることに驚かされます。人間は、運動してエネルギーを消費すれば、ホルモンや神経の働きにより空腹感が生じ、食べ物(エネルギー)の補充に向かいます。また、怪我をすれば、痛みとしてそのことを大脳へ通知すると同時に、その部分を修復させようとする生理作用が働きます。しかるに、全てにムダがありません。しかし、生産の現場はどうでしょうか、正しいはずの生産計画で投入された材料が、工程間で滞留してムダの温床となったり、過剰生産により市場要求とミスマッチとなることが日常です。JIT生産では、これを、有機的なものづくりの仕組みで解決しようとします。この本質を理解していると、個別手法に縛られず、柔軟に適用を考えることができます。
②平準化・流れ化
JIT生産では、生産を平準化して停滞をなくし流れ化させることが前提となります。工程間のアンバランス、市場にミスマッチな生産ロット等を対策・平準化し、市場要求に限りなく連動した生産を行うことが求められます。この実現のためには、ものの流し方の仕組みを変えるだけでは不十分であり、人や機械設備が柔軟に変化対応できる体質が不可欠です。段取り時間の短縮、多能工化、不良ゼロ等が基礎となるのです。
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