前回のその18に続いて解説します。
6. 企業とスッタフの信頼度を左右すること
トラブルの事実関係や現場観察の結果は、必ず専用の記録ツール(専用ノート等)に記入することが大切です。スタッフによっては、小さなメモのような紙片に重要問題を走り書きする人もいますが、そうした態度は相手に不信感を与え、いい加減な対応をイメージされかねないのです。
「おざなりにメモを書いて、ポーズをとっているだけか。さんざん質問しておいて、メモー枚の記録なのか」
クレーム顧客の心中は、メモー枚の存在で激しく揺れ動きます。
こうした不用意な対応を未然に防止するためにも、専用記録ツールをしっかり用意して、「この件は正確に記録し、誠実な対応をいたします」という印象を持たれることも、極めて重要なことです。
メモー枚、ノート一冊で、企業とスタッフの信頼度が大きく左右されることをしっかり認識して下さい。
◆ クレーム顧客の信頼をつかむ訪問面談のコツ
1. 聞き取って確認を繰り返すとは
聞き取って確認、聞き取って確認を繰り返しましょう。表面的な同意を鵜呑みにして、顧客心理を軽んじてはならないのです。クレーム交渉は、要所要所で双方が確認し合いながら、「納得」を前提に進めていくことが肝要です。どちらかが一方的に自己主張を繰り返したり、敬遠し合うのであれば、何のために現場に駆けつけて、相手と真摯に向き合おうとしているのかわかりません。
少なくともお客さま相談室のスタッフは心に余裕を持って、クレーム顧客が何に怒りを感じて、何を求めているのかをしっかり観察し、確認作業を繰り返しながら、交渉をきちんとまとめていかなければなりません。
さらに大切なことは、確認に同意したときの表情や声、態度を正確に観察することです。表面的な同意を鵜呑みにして、顧客心理を軽んじてはなりません。表面的には納得して同意したように見えても、本当に満足を感じて同意してくれたのか、それともなんらかの不満を心に隠しながら同意していたのかを見極めなければならないのです。
スタッフは、微妙な顧客心理を冷静に観察しながら「確認と同意」を繰り返していく必要があります。考えもなく、ついつい話の幅を広げすぎて、トラブルを複雑にしないことも大切です。
換言すれば、そうしたクレーム顧客の微妙な感情や表情を窺い知ることができるのが、訪問面談の大きなメリットといえるでしょう。電話では、相手の声の調子やイントネーションを...
感じ取ることはできても、表情を読み取ることは不可能です。
アメリカの心理学者であるメハラディアン氏によって、言葉だけで自分の真意を相手に伝えることは、極めて困難(伝達率はわずか7%)であると証明されています。だからこそ、面談の利点を最大限に活かして、クレーム顧客の心理の裏側を、十分覗きこんでいただきたいのです。
次回は、2.今後の対応日程の伝え方、「安心と信頼」を示すこと。から解説を続けます。
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント ダイヤモンド社発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載