2. 顧客がゼロになってしまう恐ろしさを知れ!
前回のその25に続いて、解説します。
今回は、「顧客」という認識について、少しまとめておきます。
私たちは、毎日のビジネスシーンにおいて、同じような意味を表す似た言葉を乱用していることに気づくでしょう。何気なく使ってしまう顧客という言葉も、その一つです。
顧客、お客さま、お得意さま、お取引さま、お馴染みさま、ご聶肩さま、クライアント、コンシューマー、カスタマーといった言葉を何気なく多用したり、企業や営業店などが習慣的に使い分けているケースは少なくないのです。
「うちのお得意さまは……」
「当社の顧客は……」
「当店のご聶肩筋は……」
同じようなイメージを思い浮かべながら、別の言葉で会話が成立してしまう現実があります。したがってここでは、本書の理解を確実にするための共通認識として、私か考える「顧客」という言葉の意味について、触れておきます。
私は、顧客という言葉を「C・D・E・S」という4つの文字で言い表せると考えています。
最初のCという文字は、Customerの頭文字です。いわゆる、ごく一般的に用いられる最終消費者及び生活者、ユーザーといった意味です。同じCでも、Consumer(消費者)のCを指し示すのでありません。顧客とは単なる商品や金銭の消費者ではなく、自らの意思や価値観を持つ生活者及びユーザーとして認識すべきです。
続くDというのは、Dealerの頭文字を指しています。大雑把に解釈すれば、法人顧客ということになります。B to Bのビジネスも、立派な顧客にほかならないでしょう。
メーカーと関係の深い法人としては卸、問屋、商社、または販売店といった存在がイメージできるますが、これらも大切な顧客であると認識しましょう。さらに、Eの文字で表したのがEmployeeです。こちらは言うまでもなく、自社や関連会社の社員及び従業員を指しています。そして、最後のSはStockholder、すなわち株主を意味しています。
ここで、一つ大切な指摘をしておきます。
顧客を意味する「C・D・E・S」という4つの中で、「C及びD」と「E」には、大きな意味の「相違」があることに気づいていただきたいのです。先に示したCとDが「社外の顧客」、Sは社内と社外の両方にまたがる存在であるのに対し、Eだけが「社内の顧客」を表しています。社外顧客と社内顧客。ここが非常に重要なポイントです。顧客は社外と社内に存在する「2つの顧客」があることを、しっかりインプットして下さい。
ただし、大切なことがあります。すべての顧客が神様ではない、という現実です。一定期間内における購入金額や購入頻度をきちんと分析し、企業に大きな貢献をしてくれている顧客をロイヤルーカスタマーとして、特別なサービス対象と認識すること...
も重要なサービス戦略です。ややもすると、すべての商品の購買顧客や店の利用顧客を「我が社の顧客」と考えがちになりますが、顧客はもっと多様で、幅広く存在していると心得ましょう。
そうした多種多様で広がりのある顧客に対して、お客さま相談室が「最高の満足」を提供するには、どうしたらよいのでしょうか。お客さま相談室の態勢づくりは、どのように行うべきなのでしょうか。自社の顧客像をしっかり頭に思い浮かべながら、次回のお客さま相談室・実践ノウハウを見ていきましょう。
次回に、続きます。
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント ダイヤモンド社発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載