前回のその32に続いて解説を進めます。
4. クレームを宝物に変えてしまう「奥の手」
【クレーム対応心得】
・クレーム顧客はファンの予備軍であり、ファンそのものです。クレームは、顧客の愛情表現と心得よう。
花王の消費者相談センターに入る電話の中で、明らかにクレームのカテゴリーに含まれるものは、1%ほどしかないのです。顧客満足に対する長年の企業努力が見事に定着した結果、クレ-ム数は年を追うごとに減少傾向が顕著になっているからです。花王のケースは、顧客を大切にする企業として、「理想の姿」と言えるかもしれないでしょう。
ここで、「企業と顧客の声」に関する興味深い事実を紹介します。
花王の消費者相談センターに入るクレームは確かに減少していますが、センターにかかってくる電話の総数は、かえって増加しているのです。
クレーム電話が減って、電話の本数が増加していく。この反比例現象は、いったい何を意味するのでしょうか。
答えは、明快です。
顧客が発信してきたクレーム情報を、顧客の立場から、顧客の目線で認識し、誠意をもって解決することで、花王はクレーム顧客を「ファン」にしてしまったのです。クレームが減少すればするほど、顧客満足度はぐんぐん向上し、花王のファンがどんどん増加しています。
その結果、「クレームの減少とファンになった顧客からの電話の増加」という好循環が創造され、花王と顧客の距離はさらに短縮されています。
これに対して、まったく正反対のケースがあります。
クレーム顧客を「企業の厄介者」と認識し、いい加減な対応に終始して、顧客との関係をさらに悪化させるような企業は、クレーム対応を繰り返すたびに、一人また一人と顧客を失っていきます。クレームがさらなる不満や怒りを生み出して、企業と顧客の距離は短縮されるどころか、対立関係を深めることになりかねません。
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このような企業にとって、クレームを訴える顧客は「敵」以外の何者でもないのです。花王のケースに比べるまでもなく、明らかに過ったクレーム認識といえるでしょう。クレーム顧客はファンの予備軍であり、ファンそのものなのです。ぜひ、「顧客満足の真実」を心に刻みましょう。
次回に続きます。
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント ダイヤモンド社発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載