前回のその33に続いて解説を進めます。
4. クレームを宝物に変えてしまう「奥の手」
【クレーム対応心得】
・ライバル商品の問題点がクレーム情報から見えてくる。
お客さま相談室に入る情報は、多種多様です。品質に関する質問やクレーム、製品の使い方に関する疑問、またはサービスに対する意見やコンプレイン、そのほか広告宣伝、商品表示など、ありとあらゆる情報が押し寄せてきます。しかし、案外見逃しがちな顧客からの情報の一つに「ライバル企業及びライバル商品情報」があります。前に示したとおり、企業に電話をかけてくる人は、自社の顧客及びファンの予備軍と考えてよいのです。
ファンは自分が大切にしている相手(この場合は企業や商品)に、基本的に好意を抱いています。その顧客が、長年のロイヤルーカスタマーなのか、それとも漠然と好感を寄せている人なのかは別にして、なにがしかの「好意」をベースにして電話をかけてくることは確かです。
顧客からの電話は、企業への「支持表明」なのです。だからこそ、ときにライバル他社の製品やサービスに関する不満やクレームを、好きな企業に問い合わせて問題の所在や正否を確認するのです。
「この前、A社のお店に行ったらあんまりひどい態度なんて、喧嘩しちゃったのよ。あんなサービスは絶対にしないでくださいね」
「B社の◯△は本当に使いづらいね。私はおたくの製品を使っているんだけど、娘がいま話題の◯△を買ってきたから、ちょっと使ってみたら、ほんとに使いづらいんだ。デザインばかり最新型で格好よくしても、使いづらいのはどうしようもないね。娘みたいな若者はデザインで誤魔化されても、我々のような大人は受け付けられないよ」
あなたの会社の顧客(ファン)は、こんなふうに、ライバル社に感じた不満や怒りをストレートにぶつけてきます。「サービスが最低だ」「話題の新商品はデザインばかり凝っているけど使いづらくてしょうがない」と切実に訴えます。
はたまた「ライバル社のCMタレントが気に入らない」とか、「あの会社はお客さま相談室の対応が悪い」といった不満まで「情報提供」してくれます。
一つ、質問します。
企業がライバル社に対する顧客の本音を探ろうとするとき、いったいどのような活動を行うでしょうか。
通常、企業が市場及びライバル社の実情を把握したいときは、それなりのコストと手開ひまをかけて、大規模なリサーチをするのが常套手段です。だが、お客さま相談室の機能をフルに活用すれば、のどから手が出るほど知りたいライバル社の現状を、顧客が進んで教えてくれるのです。この場合、リサーチーコストはタダです。顧客が、自分の電話を使い電話代を負担してまで、ライバル社の内情を伝えてくれるの...
です。
こんなコストパフォーマンスに優れた情報収集手段が、ほかにあるでしょうか。
ライバル社の情報を大量に集めることができるあなたの会社は、どのような優位性を実現することができるのでしょうか。言うまでもありません。ライバル社の不満やクレームをすべて解決した商品やサービスを開発して、顧客に提供すればよいのです。高い顧客満足を実現した商品はアッという問に顧客の心をとらえて、ライバル社のシェアは一気に下降線を描いていくでしょう。
次回に続きます。
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント ダイヤモンド社発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載