クレームは大切な宝の山 クレーム対応とは(その39)

 
  
 

5. クレームが、企業を「顧客満足体質」に変える。

 前回のその38に続いて、解説します。
 

  【クレーム対応心得】

 
 四季に恵まれた細長い日本列島は、気候の地域変化が激しく、メーカーが商品開発をする場合は、当然そうした気候の地域性を研究することが理想的ですが、寒冷地や温暖地の微妙な季節変化や気候変動が商品に与える影響は、なかなか把握しにくいのが現実です。同じ商品を使用しても、気温の急激な低下に耐えられないケースや急激な温度上昇で変化をきたすケースなどが起こりかねないのです。
 
 メーカーとしては地域性に十分配慮して商品を開発したつもりでも、自然現象の落とし穴は人知を超えて強烈なこともあります。
 
 実際、メーカーに飛び込んでくるクレームには、商品そのものの根本的な欠陥ではなく、季節変動の耐久性によるクレームなどが少なくないのです。
 
 ところが、そうした地域特性に深く関係したクレームには、商品開発の思わぬヒントが埋もれていることもあります。クレームを引き起こす根本原因となる地域特性を注意深く観察することにより、他社商品と差別化した「固有の地域配慮型商品」が開発できるのです。
 
 現代は、技術的に成熟した商品が市場にあふれているので、基本性能、デザイン、価格など、最大公約数の部分で差別化することが難しくなりました。そうした開発受難時代だからこそ、相談室のクレーム収集機能を充実させて、より詳細な商品使用情報を大量に収集、分析し、地域配慮型商品の開発で「大きな差」をつけていただきたいのです。
 

【クレーム対応心得】

 
 トップダウンとボトムアップ。企業経営の手法が問題になるとき、必ず分析対象になるのが、トップダウンとボトムアップという、企業のマネジメントスタイルです。この両者、どちらの経営スタイルがよいのかは一概に即断できませんが、お客さま相談室を理想的に機能させ、クレームを顧客満足に進化させる経営スタイルを作り上げるためには、企業の真ん中に最強のお客さま相談室を配置する「顧客中核主義スタイル」が不可欠になります。
 
 企業の中核=ヘソとして多目的、多角度的に活躍するお客さま相談室で集められる情報が、組織のあらゆるところに浸透することで、企業全体の意識変革が推進されていきます。
 
 その意味で、顧客のクレームが提供してくれる最高の宝物は、時代とともにつねに進化し、柔軟に対応できる優れた企業体質を作り上げることではないでしょうか。
 
 相談室に入ってきた顧客の声が組織の壁を越えて社内を駆け巡り、企業全体が顧客満足と向き合うようになる。いわば、全社挙げて「顧客満足体質」を作り上げていくことが、...
クレームから生まれる「最高の宝物(新商品開発、新サービス開発、物流/ロジスティックス革新、工場の改革、設計・開発の革新、組織改革、意識改革などにつながる宝の山)」なのです。
 
 お客さま相談室に飛び込んだクレームが宝物に変わるとき、社員一人ひとりの意識は変わり、企業は大胆に変革するのです。トップと現場が融合したトップダウンとボトムアップの好循環が、女神のサイクルを生み出すのです。
 
 次回は、クレーム対応とは(その39) 顧客の代弁者になろう。から解説を続けます。
 
 【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント  ダイヤモンド社発行
            筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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