顧客の代弁者になろう クレーム対応とは(その43)

 
  
 
 前回のその42に続いて、解説します。
 

1. 改革の先延ばしは顧客離れを誘発する

  【クレーム対応心得】

 
 可能なかぎりの方法によりお客さま相談室の存在を広めることで、毎日、お客さま相談室にはありとあらゆる情報が飛び込んでくるようになります。受信した問い合わせやクレームを快刀乱麻に片づけていくプロフェッショナリズムも悪くないのですが、一歩間違うと非常に効率の悪い「処理型」対応に時間を費やしてしまう危険があります。
 
 逆に、極度に慎重になりすぎて、回答を後回し後回しにするようでは、顧客の不満は高まるばかりです。相談室業務の基本はスピードと誠実さにあるのだから、不必要な慎重さは、「顧客が離れていくお客さま相談室」の特徴と言っても過言ではありません。
 
 では、相談室のスタッフはどのような態度で問題解決に当たればよいのでしょうか。
 
 その要諦が、「優先順位の確定」にあります。
 
 たとえば、営業マナーに関する問題が起こっていたとしましょう。よく実態を調べていくと、確かに営業マンの一部にマナーの悪さが認められたので、問題を起こしたAという営業マンに厳重注意して、マナーの改善を図ることにしました。
 
 ところが、これで一件落着かと思ったら、しばらくして、再び営業マナーの悪さが指摘されました。今度は、Bという別の営業マンのケースです。すぐに事実関係を調査して、Bに厳重注意を与え、問題は解決できました。
 
 しかし三度、同じような営業マナーの問題が発生しました。問題の張本人はAでもなく、Bでもなく、入社したばかりの新人営業マンのCだったのです。まるで、モグラ叩きをしているような問題解決状況だが、こうしたケースは現実に少なくありません。解決したと思った問題が、何回も何回も再生産されて、お客さま相談室はそのたびに多大な時間と労力を費やすことになります。こうしたクレームの連鎖は、いったい何か問題なのでしょうか。
 
 問題の所在を特定し、最適な解決法を見つけだすポイントが、取り組みの優先順位にあることを知って下さい。
 
 同じようなクレームや問題が続く場合、共通の原因(本質的な原因)が横たわっている可能性が高いのです。その本質的な問題点を見つけだすには、一つひとつのクレームを個別解決するばかりでは本質的な解決には結びつかないのです。
 
 前回、指摘したように問題を定性的に深く分析し、営業システム全体の視点から問題点を把握していくことが求められます。つまり、先のような繰り返し引き起こされるマナー問題では、個々のマナー改善を場当たり的に行うのではなく、営業システムの抜本的な見直しこそ、最優先で行われるべきなのです。解決すべき優先順位を明確にすること...
で、個々のクレームが一挙に解決することも珍しくありません。
 
 相談室のスタッフは、個々の問題対応に振り回されることなく、つねに定性情報を大切にしながら、問題解決に優先順位をつけていく習慣を身につけましょう。問題の所在を客観的に把握し、合理的で実践的な取り組みをすることで、問題解決のスピードは格段に速くなるのです。また、問題の発生から経過、そして解決に至るまでの実態を記録しデータベース化して、常時活用できるようにしておくことが重要です。
 
 次回に続きます。
  
【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント  ダイヤモンド社発行
           筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

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