データでビジネス成果を出すときの最大の壁 データ分析講座(その66)

◆ データ活用は日常業務化(運用化)しないと意味はない。その秘密は、業務プロセスの「Before & After」

 データ分析している側から見ると、何かしらデータ分析をしたり、予測モデルを構築したりすると、データ活用した気分になったりします。データ活用するビジネスの現場から見ると、どうでしょうか?データでビジネス成果を出すときの、最大の壁が日常業務化(運用化)です。定着化といってもよいでしょう。

1. データ分析:予測精度よりも定着化

 例えば、予測モデルを作るとき、データ分析側は大きな過ちを犯しがちです。

 高度な技術を使い、過度に予測精度を求めたりします。予測精度を求める以上に、現場でいかに使てもらえるかを考える必要があります。なぜならば、現場で活用されなければ、どんなに予測精度が高くても無意味だからです。

 予測だけではなく、要因分析や異常検知などでも同様です。現実感のない小難しいロジックを使うと、現場では敬遠されます。リアリティが無いからです。要するに、予測精度を求める以上に、現場で使ってもらうことを考えなければなりません。ビジネスの世界であれば、仕事でデータ分析をするのであって、趣味でデータ分析をしているわけではないからです。

 単に一度や二度、現場で使ってもらうのではなく、定着化することが非常に重要です。データ分析や予測モデルを活用することが、日常の業務の中で当たり前になる、ということです。このことは、予測精度を求める以上に重要なことです。活用されて初めてビジネス成果が生まれるわけですから、当然と言えば当然なのですが、油断すると忘れてしまうことが多々あります。

2. データ分析:使いどころはどこか?

 例えば、予測モデルを活用してもらうためには、何が必要でしょうか?

 答えは明白で、その予測モデルを活用してもらうための「使いどころ」を明確にすることです。どんなに高精度な予測モデルでも、どこで活用すればよいのかわからないと、活用しようがありません。

 それは単に、「この場面で使う」という感じに「使いどころ」を明確にすうのでは不十分です。

 例えば、受注予測モデルを構築したとします。予測モデルを構築したデータ分析担当が、「提案先の見込み顧客に行く前に、この受注予測モデルを使ってください」と言ったとします。これでは恐らくこの予測モデルは活用されないことでしょう。受注予測モデルを使う場面がイメージ出来ないからです。

 例えば、「週次の営業ミーテイング時に使う『見込み顧客リスト』に受注確度の情報を付け加えるために、このリスト作成時に受注予測モデルを使い受注確度を計算する」ぐらいにしなければならないでしょう。

 要するに、データ分析や予測モデルを活用する側の「業務プロセス」の中で、活用する場面を具体化する必要があります。そのためには、当然ですが、活用する現場の「業務プロセス」などの日々の活用を把握しておく必要があります。

3. データ分析:業務プロセスの「Before & After」まで示せ

 データ分析や予測モデルを使うことで、業務プロセスが具体的にどのように変化するのかを示すことで、現場のデータ活用が飛躍的に高まるからです。ただデータを活用しろだの、構築した予測モデルを使えだの言っても、現場はどのように使えばよいのかがイメージできないことでしょう。

 しかし、日常の業務プロセスが、具体的にどのように変化するのか、「Before & After」まで示すと、具体的なイメージを持つことができ、活用されやすくなります。それだけでも不十分な場合があります。イメージできることと、実際に日常業務化(運用化)することは違います。データ活用の検討段階でイメージしたことと現実はちょっと違いますし、実際に予想していなかったような壁にぶち当たるものです。では、どうすればよいでしょうか?

4. データ分析:日常業務化(運用化)するまで徹底する

 データ活用は定着すると非常に大きな武器になります。営業生産性や販促効率があがります。

 業務プロセスの「Before & After」まで示し、実際の現場で活用するところまで漕ぎ付けたら、次にすべきは日常業務化(運用化)するまで、業務プロセスを改善していきます。先ほど述べましたが、データ活用の検討段階でイメージしたことと現実はちょっと違うということは、往々にしてあります。

 例えば、イメージしていたよりも受注確度を計算する工数が多いだの、週次の営業ミーテイング時に使う「見込み顧客リスト」の作成がイメージしていたよりも大変な作業になっただの、受注予測だけでなく受注金額も予測する必要があるだの、新規顧客の受注予測よりも既存顧客の取引継続予測(離反予測)のほうが優先度が高いだの、そもそも予測業務をする担当者がいないだの、導入したツールを使いこなすまで時間がかかるだの、色々なことが起こります。

 実際の現場でデータ活用しながら、その現場の幸せなデータ活用の「カタチ」を目指します。

 ここで忘れてはいけないことがあります。データ活用を現場でしようとすると、そのための工数が増えます。データ活用するための時間です。この増えた工数以上に何かの工数を減らさなければなりません。ある工数を削るか、短くするのかのどちらかです。

 人も増えないのに、面倒な分析ツールが導入され、今までと異なる「動き方」を強いられたら、現場はデータ活用するモチベーションはかなり低下します。日常業務化(運用化)するまで徹底するとは、今まで以上に成果を出せて、しかも工数などの手間暇が減るまで、データ分析者が現場に向き合うことを意味します。最初は不効率に見...

えるかもしれませんが、その現場の幸せなデータ活用の「カタチ」をしつこく追求することで、必ず大きな果実を手にすることができます。
 

5. データ分析:データでビジネス成果を出すときの、最大の壁が日常業務化

 今回は、「データ活用は日常業務化(運用化)しないと意味はない。その秘密は、業務プロセスの『Before & After』」についてお話ししました。

 データでビジネス成果を出すときの、最大の壁が日常業務化(運用化)です。例えば、単に予測モデルを構築しただけでは、現場でデータ活用は定着化しません。素晴らしいデータ分析や、高精度の予測モデルの構築よりも、いかに現場に定着化させ、日常業務の中で当たり前のようにデータ活用させるのかを実現させることに注力しなければなりません。

 データ分析者、データサイエンティスト、分析官、データマイナーなど色々な名前で呼ばれますが、効率的なビジネス成果を出すための「カタチ」を作るまで、我慢強く諦めずに根気よく、現場にデータ活用を定着化させる活動をする必要があります。

 間違っても、データの活用場面や分析テーマを現場に求めてはいけません。データ分析のプロであるデータ分析者が、データの活用場面や分析テーマを見つけるところから、現場をリードする必要があります。

◆関連解説『情報マネジメントとは』

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