情報、常識の検証を考える

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1、勝ち組と負け組を支配する情報

 皆さんがご存じの大手予備校有名講師である林先生が、かつてテレビで「情報」に関して興味深いことをおっしゃっており、それを見て情報に関して改めて考えさせられました。

 「これまでの人生経験で勝ち組に入っている奴と負け組に入っている奴の決定的な違いは何か」という問い掛けでした。「それは情報を持っているかどうかの違いだ。勝っている奴は情報を持っている」というのです。

 確かに、おっしゃる通りだなと共感しました。

 そういえば私が学生の頃「サラリーマンを殺すのに刃物は要らない、情報を与えなければよいだけ」という有名なフレーズを思い出しました。SNSが席巻する現代では「情報」は、統制下で虐(しいた)げられてきた国民が独裁国家をも転覆させるほど強力な武器にさえなります。

 ところで、我が国の情報通信の取り組みに関しては、総務省の情報通信白書で毎年公開されています。

 最新の白書によると、4か国比較(日・米・英・独)における各国企業のAI・IoT導入状況と予定を「プロセス」(生産工程・配送方法など)と「プロダクト」(製品・サービスの市場への導入)からみると、日本企業のAI・IoT導入率は欧米企業と大きな差はないそうです。

 しかしながら、企業のAI・IoTの利活用の課題に関する比較では、日本企業は、欧米企業と比較して情報通信システムに関する課題について回答率が30%低く、事業や組織に関する課題について回答率が2倍以上も高いそうです。

 すなわち、AI・IoT利活用がもたらす効果や、その効果を最大化するための方策について、日本企業は具体的に見通せていない可能性があるというのです。そして、欧米諸国との差は今後じりじりと開いていく可能性さえ示唆しています(出典:「平成 30 年版情報通信白書」総務省)。

 企業活動において、勝ち組に入る要件として、情報を持っていることは大切なことですが、加えて戦略的にどのように使うか併せ持つことも当然必要です。グローバル競争に勝っていくために、質の高い情報を入手して、課題解決に至るシナリオが描けるのかが肝要です。

2、常識の検証について

 毎年、夏休みになると子供の自由研究の手伝いを大変な思いで手伝っていたことがありました。

 私の在住する地区では、2学期が始まるころには自由研究の作品が展示されるのですが、地区で賞を取った子供たちの作品は、次に県の展示会に展示されます。私も子供たちのおかげで何回か県の展示会に足を運ぶ機会に恵まれたのですが、研究のネタは尽きないなという印象を持って帰ってきます。研究テーマの分野自体やり尽くされた感のあるものであっても、見方を変えて実験した結果、新たな知見が生まれ評価の対象とされています。

 原則、子供がやる研究ですから、大人から見たら「常識」と思われているものであっても真面目に取り組んで、それなりの新たな結果を出しています。

 ところで、常識とは経験から得られた知識であって、厳密に科学的な検証を経たものではないものも多いと思います。

 特に分析技術などがそれほど発展していない時代にベテランの技術者らが経験で会得してきたものの多くは、技術常識として今日まで何の疑問や検証も経ずに、若手に伝承されていることがあります。また、その分野の大御所が発言した内容も然りです。

 しかし会社時代にその技術常識が正しいのかどうかを疑ってみた研究者の中には、常識を覆す新たな知見を得て、優れた研究成果へ繋げた成功者らがいました。そうした方々を見て思っ...

1、勝ち組と負け組を支配する情報

 皆さんがご存じの大手予備校有名講師である林先生が、かつてテレビで「情報」に関して興味深いことをおっしゃっており、それを見て情報に関して改めて考えさせられました。

 「これまでの人生経験で勝ち組に入っている奴と負け組に入っている奴の決定的な違いは何か」という問い掛けでした。「それは情報を持っているかどうかの違いだ。勝っている奴は情報を持っている」というのです。

 確かに、おっしゃる通りだなと共感しました。

 そういえば私が学生の頃「サラリーマンを殺すのに刃物は要らない、情報を与えなければよいだけ」という有名なフレーズを思い出しました。SNSが席巻する現代では「情報」は、統制下で虐(しいた)げられてきた国民が独裁国家をも転覆させるほど強力な武器にさえなります。

 ところで、我が国の情報通信の取り組みに関しては、総務省の情報通信白書で毎年公開されています。

 最新の白書によると、4か国比較(日・米・英・独)における各国企業のAI・IoT導入状況と予定を「プロセス」(生産工程・配送方法など)と「プロダクト」(製品・サービスの市場への導入)からみると、日本企業のAI・IoT導入率は欧米企業と大きな差はないそうです。

 しかしながら、企業のAI・IoTの利活用の課題に関する比較では、日本企業は、欧米企業と比較して情報通信システムに関する課題について回答率が30%低く、事業や組織に関する課題について回答率が2倍以上も高いそうです。

 すなわち、AI・IoT利活用がもたらす効果や、その効果を最大化するための方策について、日本企業は具体的に見通せていない可能性があるというのです。そして、欧米諸国との差は今後じりじりと開いていく可能性さえ示唆しています(出典:「平成 30 年版情報通信白書」総務省)。

 企業活動において、勝ち組に入る要件として、情報を持っていることは大切なことですが、加えて戦略的にどのように使うか併せ持つことも当然必要です。グローバル競争に勝っていくために、質の高い情報を入手して、課題解決に至るシナリオが描けるのかが肝要です。

2、常識の検証について

 毎年、夏休みになると子供の自由研究の手伝いを大変な思いで手伝っていたことがありました。

 私の在住する地区では、2学期が始まるころには自由研究の作品が展示されるのですが、地区で賞を取った子供たちの作品は、次に県の展示会に展示されます。私も子供たちのおかげで何回か県の展示会に足を運ぶ機会に恵まれたのですが、研究のネタは尽きないなという印象を持って帰ってきます。研究テーマの分野自体やり尽くされた感のあるものであっても、見方を変えて実験した結果、新たな知見が生まれ評価の対象とされています。

 原則、子供がやる研究ですから、大人から見たら「常識」と思われているものであっても真面目に取り組んで、それなりの新たな結果を出しています。

 ところで、常識とは経験から得られた知識であって、厳密に科学的な検証を経たものではないものも多いと思います。

 特に分析技術などがそれほど発展していない時代にベテランの技術者らが経験で会得してきたものの多くは、技術常識として今日まで何の疑問や検証も経ずに、若手に伝承されていることがあります。また、その分野の大御所が発言した内容も然りです。

 しかし会社時代にその技術常識が正しいのかどうかを疑ってみた研究者の中には、常識を覆す新たな知見を得て、優れた研究成果へ繋げた成功者らがいました。そうした方々を見て思ったのは、探求心や好奇心が旺盛であっただけでなく、もう一つ大切なことをしていたと感じています。

 それは、事前の調査(特許や学術文献)をしっかりとしていた事です。常識とはいわれているが、調べ尽くしたところ、どこにも検証結果がない。故に、自分で試してみた。その結果、新たな結果に辿(たど)り着いていると感じています。

 すなわち常識を疑えるほどよく調べたが、これまで知られていないものは、自分で創る動機付けになっていると思います。

 子供たちの自由研究を見ても同様に、我々の身の回りには、常識と思われているが検証されていないテーマが沢山埋もれています。事前調査もしっかりとすることで、進もうとしているテーマの方向性が新規に変わると思います。

 

 【出典】八角様 HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

八角 克夫

化学技術・知的財産・情報の3つの柱のプロとして、お客様の課題解決や将来へ向けての提案をしていきたいと考えております。

化学技術・知的財産・情報の3つの柱のプロとして、お客様の課題解決や将来へ向けての提案をしていきたいと考えております。


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