1.人の認知構造を“言葉”で明確に
評価グリッド法は、1986年に関東学院大の讃井純一郎氏らによって開発されたインタビュー調査手法で、臨床心理学の分野で治療を目的に開発された面接手法(レパートリーグリッド法)をベースに改良発展されたものです。
評価グリッド法はパーソナル・コンストラクト理論、すなわち人間は各自が固有の認知構造を持ち、これにより環境を理解し、どんな行動をとるべきかを決定、その結果を予測しようと努めていることを前提に、認知構造を把握しようというものです。ここでいう認知構造は「窓が大きい−小さい」「天井が高い−低い」といった客観的かつ具体的な理解の単位を下位に、また「開放感がある−ない」といった感覚的理解を中位に、さらに「快適な生活が送れる−送れない」というより抽象的な価値判断を上位に持つ、階層的な構造になっています。評価グリッド法は、この構造のうち評価に関する部分だけを選択的に取り出し、その構成単位(評価項目)とその構造(評価構造)を回答者自身の言葉によって明らかにすることを狙った手法です。
2.容易に評価項目を言語化
評価グリッド法最大の特徴は回答者に様々な環境を提示し、これらを比較することでどちらが好ましいかを判断させ、その評価判断の理由を尋ねるという形式で進め、評価項目を回答者自身の言葉によって抽出する点にあります。「あなたはこの環境に対し、どんなニーズをお持ちですか」といった直接的な質問をするのに比べ、回答者ははるかに容易に自身の評価項目を言語化できるのです。
また単なる比較ではなく評価判断まで行なった上でその理由を尋ねることから、評価に関わる項目だけを選択的に抽出することが可能で、調査の効率化と結果の冗長性回避が実現できます。さらに評価判断が一種の言質として機能するため、通常のインタビュー調査では聞き出しづらい、例えば「お金持ちに見られたい」といった回答者の本音も引き出しやすいという副次的効果も期待できるのです。
評価グリッド法第二の特徴は、回答者には回答の自由を確保しつつも、調査自体は一定の手順に従って進められる点です。その結果、従来の一般的なインタビュー調査のように、インタビュアーの個人的能力に大きく依存するといっ...