1. 算数より中学数学の方が簡単!?
皆さんは小学校で鶴亀算を習い、毎回どうするのかよく覚えておられなかったのではないでしょうか?鶴亀算は算数嫌いが発生する原因ともいわれています。例えば、鶴と亀の合計が8匹で、足の数が20本とします。すると、先生は、以下のような解法を教えてくれたはずです。
「8匹全部が鶴であったら、鶴は2本足なので、
2x8=16本
となります。すると、20本ある足の数と4本合わない。この違いは、鶴と亀が混じっていたからである。亀は4本足であるから、1匹違うことに2本足の数が違ってくるため、
4÷2=2匹
が亀の数、残りの6匹が鶴の数、ということになる」。
この解法を覚え、違った数字(どころか鶴と亀でない別の形の問題)に適切に答えるためには、相当の努力が必要です。試験の前日に「一夜漬け」して凌(しの)ぐことはできても、しばらくやってないと、確実に同じ解をサラサラと出せないのが当たり前でしょう。そのため、マンガなどを活用して頭にしみつける、という方策も採られます。
しかし!!その後、中学校に入って代数を習い、初めて次のように考えると「確実に」解けることを教わります。
「鶴がx匹で亀がy匹いるとする。その合計が8匹で、足の数の合計が20本だから、
x+y=8匹
2x+4y=20本
という2つの方程式が成り立つ。これを解けば、
x=6
y=2
が求まる」。
何と明確なことでしょうか。小学校の算数より中学校数学の方が簡単ではないですか?「代数で簡単に解けるんだから、鶴亀算などという難しい考え方は、もう覚えなくても良いんだ!」となった人も多いのではないでしょうか?しかし、これで良いはずはありません。小学校での標準的な教え方に問題があるだけなのです。ここに現場数学が登場します。
つまり、鶴亀算は、以下のように解けば良いのです。
「全ての鶴も亀も2本ずつ足を引っこめる。
すると、
2x8=16本
足が引っ込み4本が残る。出ている足は各亀の2本ずつだけなので、足が4本あるということは、
4÷2=2匹
の亀がいることになる。残りの6匹が鶴である」。
これなら覚えられますし、簡単です。
2. トランプマジックと鶴亀算
手品師がトランプなどを使って不思議な数当てをしてみせます。この中にも、鶴亀算が良く使われます。例えば、
「机の上にトランプがあります。私は後を向きますので、その中から1枚か2枚を次々と取って、1枚なら右側、2枚なら左側に置くことを、カードがなくなるまで続けて下さい。ただし、置く度ごとに、はい、と言って下さい。それだけで右側と左側に積まれたカードの数を当てて御覧に入れます」。
本当にそんなことができるのか?と思われますよね?もちろん、最初に机の上に置くカードの枚数は手品師が置くのですから(これも技術ですが)、ちゃんと知っています。適当にサッササと切ったように見せ掛けながら、確実に枚数を数えているのです。
しかし、その後、はい、はい、…と10回言っただけで、手品師が「あなたの右側には6枚、左側には8枚あります。」と答えたら、お客さんは、やはり驚くことになります。
これは、
はいの回数、x+y=10回
カードの枚数、x+2y=14枚(これは手品師が机の上におくときに数えている)
なので、簡単に
x=6
y=4
と分かるのですが、これが鶴亀算であると気づくのには結構難しいものがあり、手品師に騙されてしまうのです。
この問題を解く時、手品師は上述の鶴亀算の別解法で考えているのです。つまり、
「はいの数が10回あった。この10回で右左関係なく1枚ずつ減らす=総計10枚減らす。元々14枚あったのだから、残っているのは4枚で、それは2枚取った回数。つまり、2枚取ったのは4回になる。それで左側には8枚ある。残り6枚は右側にある」...
手品師が即座に数字を当てられるのは、この解法のためなのです。その秘訣は、基準を設定して、それ以外の部分だけを計算することにありました。つまり、最初から不要な値はあからさまに出さないのです。現場数学では、なるべく計算量を削減します。どうせ最後に「x-x」となる部分(鶴亀算なら「2x-2x」の部分)を「下駄」にしてしまうのです。
100から110までの合計値を出せと言われれば、我々は、
100X11+(1+2+…+10)=1100+55=1155
と計算しますが、計算機では当然、100+101+…+110をそのまま計算します。計算機に計算させるようになり、この種の無駄は無駄ではなくなってしまいました。電卓でも、この種の計算はそのまま計算していたりします。そのため、現代人は手品師により騙されやすくなっているのかも知れません。