◆ 3層塗装
金属材料以外の皮膜防食として自動車や建築物など幅広く使用されるのが塗装です。塗料は塗膜を形成するビヒクル (vehicle)と色の粒子の顔料が溶剤に分散され、そこに添加剤が加えられたものです。この塗料を構成する材料によって油性塗料、合成樹脂塗料などと呼ぶこともあります。塗装方法は簡易な方法としてローラーや刷毛(はけ)などによる塗装、スプレーを使った吹付け塗装などです。それ以外にも焼付塗装や粉体塗装などがあります。
塗装は一層の皮膜ではなく、複数層の皮膜にすることがあります。3層皮膜塗装した場合の模式図を図1に示します。
図1. 3層塗装の模式図
3層の内、防錆(ぼうせい)するのは下塗りとなります。下塗りには防錆塗料が使われるほか、下地金属との密着性によって防食作用を示しています。水や酸素が塗装を通過して金属まで到達しても、塗装と金属が密着していて、すき間がなければ腐食電池が形成されにくいです。
中塗りとは、上塗りと下塗りとの相性を良くするために塗られます。下塗りの目的は防食であり、上塗りの目的は光沢や色合い、美観維持などのために使われます。ただ、これら塗装の相性が良いとは限らないため、中塗りが使われます。上塗りは仕上がりとなるので美観や耐候性が重視されます。塗装が劣化する原因の一つに紫外線がありますが、紫外線に対する性質も重要です。
近年は環境的な視点から、塗装を行う時に使用される有機溶剤に対して使用量を減少させる動きがあります。これはVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)排出抑制やVOC対策[1]として、その活動が広がっています。
次回に続きます。
【用語解説】
[1]VOC対策:揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compounds)対策
浮遊粒子状物質や光化学オキシダントにかかわる大気汚染の状況はいまだ深刻であり、現在でも浮遊粒子状物質による人の健康への影響が懸念され、光化学オキシダントによる健康被害が数多く届出されていることから、緊...