1. サプライチェーンマネジメントの要点
サプライチェーンマネジメント(SCM)は経営における考え方で、以下3点に要約されます。
① 消費者需要に焦点をあてる
② メリット・デメリットを共有する
③ 流通経路を一体として捉える[1]
① は、最終製品の需要変動に対応した生産を行うという意味です。② は、ある部門は利益を上げているのに、ある部門は損失を出している状況を避けることです。③ は、原料の調達、製品の生産、そして製品の販売にいたる全体の最適化を考慮してマネジメントすることを説明しています。
生産管理・在庫管理を一括して行なうという点は革新的ではありません。しかしSCMは個別的な生産管理・在庫管理の考えよりも明確かつ簡潔な指標を提示できます。すなわち、原料・仕掛品・製品の在庫や加工能力の状況をトータルで示すことができます(③)。このことにより工程間の過剰在庫削減に効果を発揮し経済性に優れます(②)。さらに情報の取り扱いに配慮すれば俊敏な納期回答による顧客満足につながり(①)、カスタマーロイヤリティをより堅固にします。
このように①から③の要点を組み合わせて戦略(方針)や戦術(計画)に生かすことにより、サプライチェーンの競争力をより高みへと引き上げます。
2. サプライチェーンマネジメントの基準・指標
SCMのもっとも重要な目的のひとつは、競争力を背景にもたらされる資金の増大です。ですから評価の対象が資金の増減であることはいうまでもありません。資金の増減を説明し業務改善につなげるためには、経営資源の把握と再配分の必要があります。そのための評価において、なにを(基準)どのように(指標)とらえれば良いかご紹介しましょう。
ここではSCMのソフトウェアの多くにそのロジックが採用されている、制約条件の理論(TOC)に提案されているものをとりあげます。TOCでは経営資源(ヒト・モノ・カネ)に対応する項目にさらに以下の重要度を付して提案されています。
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① 利益
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② 在庫
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③ 業務費用(従事者)
利益は限りなく増やすことができ資金に直結することから重要度は1番となります。在庫は減らすことによって資金を増やせるものの、利益に比べその量に限界があることから2番となります。経費削減による資金獲得策としての従事者解雇は最後尾に位置づけられます。
TOCの提案は経営資源の測定尺度を指標とし、特別なことがらはありません。さらに提案されている管理会計(スループット会計)は、サプライチェーンに適用できます。
3. サプライチェーンの勝敗と金融格付け
SCMの指標として1番に挙げられる利益に関し、取り巻く状況を踏まえ検討してみます。
これまで金融機関は共通の指標を持たずに融資してきました。しかし各経営体の格付けをもとに融資の可否・利率を決めるようになってきています。経営体とのつきあい等も勘案されてきたこれまでとは状況が異なります。無借金経営を目指し、不要な短期借入金を避けるべきです。そして格付けを上げ続け融資を受けやすくしておくことで、サプライチェーンの増強をタイミングよく低金利で遂行できます。
これまでの資金繰りのよう...
在庫の見える化から利益の見える化へ、サプライチェーンに対するマインドセットを革新して下さい。
4. 引用文献
[1] Ulrika Persson. (1997). A conceptual and empirical examination of the management concept Supply chain management. Licentiate Thesis 1997/29. Luleå University of Technology.